「合格率が約70%もあるなら、E資格は意外と簡単なのでは」——この見立ては半分正しく、半分危険です。E資格は日本ディープラーニング協会(JDLA)がディープラーニングの実装力を認定する試験で、2026年第1回の合格率は69.17%。ただしこれは、認定プログラムを修了した人しか受験できない試験での数字です。一定の学習を終えた母集団でも、3人に1人は落ちています。
生成AIの普及で「AIを使う側」から「AIを作る側」への需要が高まるなか、E資格は実装力を客観的に示せる数少ない指標になりました。一方で「受験前に認定プログラムの修了が必要と聞いた」「数学がどこまで問われるのか分からない」と、申し込みの手前で足踏みする人も少なくありません。
読み終える頃には、難易度・合格率・受験料・受験資格・出題範囲をJDLA公式データで押さえたうえで、科目別の得点率から「自分にとっての本当の難所」がどこかまで見極められるようになります。受験するかどうか、いつ受けるかを、この記事の中で決めてしまいましょう。
E資格とは|JDLAが認定するAIエンジニア資格
E資格(正式名称:JDLA Deep Learning for ENGINEER)は、ディープラーニングの理論を理解し、適切な手法を選択して実装する能力を認定する試験です。試験範囲はJDLAが定めるシラバスに沿っており、応用数学から深層学習の応用、開発・運用環境までをカバーします。AIエンジニアやデータサイエンティストとしての実装スキルを、第三者の基準で証明できる点が特徴です。
G検定との違い
JDLAの資格にはE資格のほかに「G検定(ジェネラリスト検定)」があります。G検定がディープラーニングをビジネスに活用する知識を問う「使う側」向けの試験で受験資格に制限がないのに対し、E資格は実際にモデルを実装する「作る側」向けで、後述のとおり受験資格が設けられています。AIの全体像をまず把握したい方はG検定から、実装力を証明したい方はE資格へと段階的に進むのが定番の流れです。
G検定とE資格は出題のレベルも前提知識も大きく異なります。まずビジネス寄りのG検定の学習法を知りたい方は、G検定の勉強方法と必要な勉強時間もあわせて確認しておくと、自分がどちらから着手すべきか判断しやすくなります。とはいえE資格は数学・機械学習・深層学習の3領域にまたがるため、どの順で学ぶかを決められないまま参考書を開き、最初の数式で手が止まる——受験を検討する多くの人が、まずここでつまずきます。
E資格の合格率と難易度
E資格の合格率は、近年おおむね70%前後で推移しています。数字だけ見ると高く感じられますが、受験するには認定プログラムを修了している必要があり、一定の学習を済ませた母集団のなかでの合格率である点に注意してください。「誰でも受かる」試験ではありません。
| 開催回 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 2025年 第1回 | 1,043名 | 712名 | 68.26% |
| 2025年 第2回 | 1,039名 | 730名 | 70.26% |
| 2026年 第1回 | 1,317名 | 911名 | 69.17% |
難易度を左右する最大の要因は出題範囲の広さです。応用数学(線形代数・確率統計・情報理論)から最新の深層学習手法までを横断的に問われるため、特定分野だけが得意でも合格は難しくなります。では、受験者は実際にどこで点を落としているのでしょうか。
科目別の平均得点率が示す「本当の難所」——理論3科目は6割前後
JDLAが公表した2026年第1回の結果には、合否ライン以上に参考になるデータがあります。科目別の平均得点率です。
| 科目 | 平均得点率(2026年第1回) |
|---|---|
| 応用数学 | 60.48% |
| 機械学習 | 59.91% |
| 深層学習 | 60.74% |
| 開発環境 | 79.46% |
開発環境が約79%取れているのに対し、応用数学・機械学習・深層学習の理論3科目はいずれも6割前後にとどまります。つまり受験者全体が点を落としているのは、暗記で対応しやすい開発・運用まわりではなく、数式の理解を要する理論パートです。学習時間の配分を決めるときは、この3科目に厚めに割り当てるのが実データに沿った戦略になります。
E資格の試験概要|日程・受験料・受験資格
E資格は年2回、会場で実施される多肢選択式(CBT)の試験です。試験時間は120分で、100問程度が出題されます。2026年の開催スケジュールは下記のとおりです。
- 2026年 第1回:2026年2月20日(金)〜2月22日(日)(申込受付:2025年12月1日〜受験日前日23:59)
- 2026年 第2回:2026年8月28日(金)〜8月30日(日)(申込受付:2026年6月1日〜受験日前日23:59)
受験料
受験料は区分によって異なります。学生や協会会員は割引が適用されます。
| 区分 | 受験料(税込) |
|---|---|
| 一般 | 33,000円 |
| 学生 | 22,000円 |
| JDLA協会会員 | 27,500円 |
受験資格(認定プログラムの修了)
E資格を受験するには、JDLA認定プログラムのいずれかを、試験日の過去2年以内に修了している必要があります。認定プログラムは、JDLAが定める最新シラバスを網羅しているとして認定された教育事業者の講座です。受験を決めたら、まず日程から逆算して認定プログラムの受講・修了スケジュールを確保する——これが合格への最初の一手になります。
E資格の出題範囲と勉強時間の目安
E資格はシラバスに基づき、大きく5つの科目から出題されます。数学的基礎から実装・運用までが一気通貫で問われるのが特徴です。
- 応用数学:線形代数、確率・統計(ベルヌーイ分布・ガウス分布・ベイズ則など)、情報理論
- 機械学習:教師あり学習・教師なし学習のアルゴリズム、評価指標などの基礎
- 深層学習の基礎:順伝播型ネットワーク、正則化・最適化、畳み込みネットワーク(CNN)など
- 深層学習の応用:画像認識、物体検出、セマンティックセグメンテーション、自然言語処理など
- 開発・運用環境:分散処理、アクセラレータ、軽量化・高速化などの実装周り
勉強時間の目安は、受験者アンケートでは100〜200時間という回答が最も多く、次いで200〜300時間が続きます。前提となる数学やプログラミングの知識量で必要量が大きく変わるため、「何時間必要か」ではなく「自分の生活で週何時間出せるか」から逆算するほうが現実的です。認定プログラムの受講時間とは別に、自習で問題演習を繰り返す時間を確保できるかが合否を分けます。
週の学習時間から逆算する到達月数の早見表
目安の100〜300時間を、確保できる週あたりの学習時間で割ると、必要な期間はこう見積もれます。受験したい回の試験日から逆算して、どのペースなら間に合うかを確認してみてください。
| 学習ペース | 週あたり | 100時間到達 | 200時間到達 | 300時間到達 |
|---|---|---|---|---|
| 平日1時間+休日2時間 | 約9時間 | 約3ヶ月 | 約5.5ヶ月 | 約8ヶ月 |
| 平日1.5時間+休日3時間 | 約13.5時間 | 約2ヶ月 | 約3.5ヶ月 | 約5ヶ月 |
| 平日2時間+休日4時間 | 約18時間 | 約1.5ヶ月 | 約3ヶ月 | 約4ヶ月 |
数学やPythonの経験が浅い人ほど300時間側に寄ります。年2回しかない試験なので、「次の回に間に合うか」ではなく「無理なく到達できる回はどれか」で受験回を選ぶと、途中で失速しにくくなります。
シラバス改定の動向
JDLAはおおむね2年に1回を目安にシラバスを改訂しています。直近では2026年8月開催の「E資格2026#2」より改訂後のシラバスが適用される予定で、今回は最新の技術動向を踏まえたキーワードの見直しが中心とされています。認定プログラムの新シラバス対応講座の提供は2026年2月以降に順次始まる見込みのため、受験回によってどのシラバスが適用されるかを公式情報で必ず確認しましょう。
よくある質問
E資格は数学ができないと合格できませんか?
応用数学(線形代数・確率統計・情報理論)が出題されるため、数学から完全に逃げることはできません。ただし大学初年度レベルの線形代数・微分・確率統計を押さえれば対応できる範囲が中心で、高度な証明が問われるわけではありません。数学に不安がある場合は、認定プログラムの数学パートを丁寧に復習することが近道です。
未経験・独学だけでE資格は受けられますか?
受験には認定プログラムの修了が必須のため、完全な独学のみでは受験できません。ただし認定プログラムには動画中心のオンライン講座も多く、働きながら修了する人も少なくありません。プログラム修了後に、自習で問題演習を積み上げるのが一般的な進め方です。
E資格とG検定はどちらを先に取るべきですか?
明確な順序の決まりはありませんが、AIの全体像やビジネス活用の知識を先に固めたい場合はG検定から入るとE資格の学習がスムーズになります。すでに実装経験があり実務スキルを証明したい場合は、E資格に直接挑戦する選択肢もあります。
E資格の有効期限はありますか?
E資格そのものに失効はありませんが、合格者には「2026#1」のように取得回が付記されます。技術の進歩が速い分野のため、取得年が新しいほど最新シラバスに対応している証明になりやすい点は意識しておくとよいでしょう。
まとめ
「合格率70%前後」の内実は、認定プログラム修了者だけの母集団で、理論3科目の平均得点率が6割前後という試験です。数字の見かけほど甘くはない一方、受験者の得点データが公開されているぶん、対策の照準は絞りやすい試験でもあります。まずは受験したい回の試験日から逆算し、認定プログラムの修了時期と週あたりの学習時間を決めてしまいましょう。範囲が広い試験では一度間違えた論点を放置すると本番まで抜けたままになりがちですが、SkillStackには定着しきっていない問題ほど間隔をあけて繰り返し出題される復習の仕組みがあり、広いシラバスの取りこぼしを演習でつぶしていけます。
