「今から勉強を始めて、手元のテキストのままで大丈夫?」——生成AIパスポートの受験を考えている人ほど、この問いにぶつかります。一般社団法人生成AI活用普及協会(GUGA)は2026年10月1日、生成AIパスポートのシラバスを大幅に改訂し、2027年2月試験から適用すると発表しました。
見落としやすい点が1つあります。旧シラバスで受けられるのは2026年10月試験までで、その申込は9月30日に締め切られています。つまり、まだ申し込んでいない人が次に受けるのは、新シラバスの試験です。
以下では、新旧の章の対応、どの章が厚くなったか、状況別の準備方法を順に整理します。合格済みの人向けに新設された「資格更新テスト」の費用と日程もまとめました。
いつから変わるのか|旧シラバスは2026年10月試験が最後
新シラバスが使われるのは2027年2月試験からです。GUGAが公開した改訂内容の資料は、旧シラバスの対象を「2026年10月試験まで」と明記しています。
生成AIパスポートは2月・4月・6月・8月・10月の年5回、オンライン(IBT方式)で実施されます。2026年10月試験の受験期間は10月1日〜31日で、申込期間は8月1日〜9月30日でした。2027年2月試験の申込は、2026年10月1日から2027年1月31日まで受け付けています。
| 試験回 | 申込期間 | 受験期間 | シラバス |
|---|---|---|---|
| 2026年10月試験 | 2026年8月1日〜9月30日(受付終了) | 2026年10月1日〜31日 | 旧シラバス(最後の回) |
| 2027年2月試験 | 2026年10月1日〜2027年1月31日 | 2027年2月1日〜28日 | 新シラバス(最初の回) |
試験時間60分・60問・四肢択一(一部複数選択)という形式や、受験料11,000円(税込、学生5,500円)の変更は、今回の発表には含まれていません。現時点で公表されている変更点は、出題範囲です。
ここで困るのが教材です。新シラバスに対応した公式テキストは、11月24日から順次発送です。それまでの1〜2か月を、何で埋めればよいのでしょうか。
5章構成は同じ、中身は組み替え|旧→新の対応表
章の数は5つのままですが、5章すべての名前が変わりました。中でも3章と4章は、扱うテーマが大きく再編されています。GUGAの改訂資料にある新旧の章名を並べると、次のとおりです。
| 章 | 旧シラバス(2026年10月試験まで) | 新シラバス(2027年2月試験から) |
|---|---|---|
| 1章 | AI(人工知能) | AIの基礎と歴史 |
| 2章 | 生成AI(ジェネレーティブAI) | 生成AI |
| 3章 | 現在の生成AI(ジェネレーティブAI)の動向 | AIエージェント |
| 4章 | 情報リテラシー・基本理念とAI社会原則 | 生成AIのリスク予防・AI倫理・ガバナンス |
| 5章 | テキスト生成AIのプロンプト制作と実例 | 生成AIの実践と活用事例 |
3章:AIエージェントが独立した章に
旧シラバスで一部の項目として扱われていたAIエージェントが、1つの章になりました。GUGAは、RAGやMCPの内容を更新したうえで、コンテキストエンジニアリングとプロンプトインジェクションを新たに加えたと説明しています。
新シラバスの詳細キーワードには、A2A(Agent-to-Agent)、Agent Skills、ハーネスエンジニアリング、最小権限の原則、サンドボックスといった語が並びます。「エージェントに何をさせるか」だけでなく、「どこまで権限を渡すか」まで問われる構成です。
4章:「リテラシー」から「リスク予防・ガバナンス」へ
旧4章の「情報リテラシー・基本理念とAI社会原則」は、リスク予防・AI倫理・ガバナンスを軸に組み直されました。GUGAが追加項目として挙げているのは、利用者の判断・責任に関するマインドセット、組織のAIガバナンス整備の観点、シャドーAI、安全保障の4つです。
詳細キーワードには、AI法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)、AI基本計画、G7広島AIプロセス、EU AI Act、ISMS(ISO/IEC 27001)、SOC 2まで入っています。法律や国際ルールが学習範囲に入るため、それぞれの名称と位置づけを押さえておく必要があります。
1・2・5章:仕組みの理解と業務別の使い方が厚く
2章は「技術・学習・生成」の流れで再編され、事前学習・RLHF、次トークン予測、Temperature・Top-p、コンテキストウィンドウが学習項目に入りました。5章はテキスト生成とプロンプト中心の構成から、文書作成、企画・マーケティング、クリエイティブ制作、データ分析、開発・業務自動化、業種別活用まで広がっています。
中項目の数で見ると4章が最大|32項目の内訳
新シラバスの中項目を数えると、全32項目のうち9項目が4章です。SkillStack編集部がGUGA公開のシラバスPDF(全10ページ)から数えました。
| 章 | 中項目数 | 主な中項目 |
|---|---|---|
| 1章 AIの基礎と歴史 | 4 | AIの基本的な仕組み/機械学習/ニューラルネットワーク/AIの歴史 |
| 2章 生成AI | 6 | Transformer以降の技術革新/学習プロセス/生成(推論)プロセス/LLMの基礎/主要な生成AIモデルの動向/各モダリティの生成AI |
| 3章 AIエージェント | 6 | AIエージェントとは/RAG/エージェントの仕組み/MCP・Agent Skillsと外部連携/ツールと活用事例/リスク・安全性・評価 |
| 4章 リスク予防・AI倫理・ガバナンス | 9 | 基本マインドセット/代表的リスク/シャドーAI/AI出力の評価と検証/個人情報・プライバシー・秘密保持/著作権・知的財産/AI倫理とAI事業者ガイドライン/AIガバナンスと社内ガイドライン/AI法・国際ルール・AI安全保障 |
| 5章 実践と活用事例 | 7 | プロンプトエンジニアリング/文書作成/企画・マーケティング/クリエイティブ制作/データ分析/開発・業務自動化/業種別活用 |
注意してほしいのは、中項目の数は出題数の配分ではないことです。章ごとの出題数や配点は、現時点で公式に発表されていません。それでも範囲の広さをつかむ目安にはなります。4章には、明記された国内法だけでも個人情報保護法・不正競争防止法・著作権法・AI法の4つが入っています。
さらに、4章のリスクは3章のプロンプトインジェクションや5章の「権利関係の確認」とも重なります。法律や権利の論点を4章だけの話と考えず、ほかの章とつなげて覚えるのが新シラバスへの近道です。
誰に影響するのか|受験予定者と合格済みの人で分かれる
影響が大きいのは、これから申し込む受験予定者です。合格済みの人の資格はそのまま有効です。
受験予定者:申し込む回は新シラバス一択
2026年10月試験の申込が締め切られている以上、今から申し込める最も早い回は2027年2月試験で、新シラバスが適用されます。旧シラバス対応の教材だけでは、3章・4章を中心に追加・拡充された範囲をカバーできません。
合格済みの人:資格は無期限、更新テストは任意
同時に「生成AIパスポート 資格更新テスト」が新設されました。GUGAは、受講の有無にかかわらず一度取得した資格は無期限としています。更新テストは、新シラバスの内容を学び直したことを示したい人向けの任意の制度です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 生成AIパスポート有資格者 |
| 形式 | eラーニング+チェックテスト(IBT方式) |
| 所要時間 | 動画視聴3時間程度+チェックテスト10問(制限時間15分) |
| 出題範囲 | シラバスの改訂内容と重要復習内容をまとめた動画 |
| 受講費用 | 6,600円(税込)/学生3,300円(税込) |
| 申込期間 | 2026年10月1日〜2027年5月31日 |
| 受講開始日 | 2027年2月1日 |
| 受講可能期間 | 受講ID発行日から30日間 |
| 合格すると | 新しいオープンバッジを発行 |
申込の案内は、有資格者へ順次メールで届くとされています。
今どう動くべきか|状況別の判断表
結論は、2027年2月試験に向けて新シラバスで準備することです。あなたの状況に近い行を探してください。
| あなたの状況 | 受ける回 | 今やること |
|---|---|---|
| 10月試験に申込済み | 2026年10月(旧シラバス) | 10月31日までに受験する。旧シラバスの教材のままでよい |
| これから受験したい・AIの基礎知識がある | 2027年2月(新シラバス) | 新シラバスPDFで3章・4章のキーワードを先に確認し、知らない語を洗い出す |
| これから受験したい・AIをほぼ知らない | 2027年2月(新シラバス) | 1・2章の基礎から始め、11月24日から順次発送される新公式テキストで4章を固める |
| 合格済みで、新しい内容を学び直したい | 資格更新テスト | 案内メールを待って申し込む。受講は2027年2月1日から |
| 合格済みで、学び直しの予定はない | — | 資格維持の手続きは不要(資格は無期限・更新テストは任意) |
新しい公式テキストは『AXリテラシー教科書 生成AIパスポート 公式テキスト 2027年試験シラバス対応』で、翔泳社から2,090円(税込)で出ます。発行元はGUGAから翔泳社に変わりますが、執筆とシラバスの決定は引き続きGUGAが担います。旧版テキストを持っている人も、新シラバスの3章・4章のキーワードと照らし合わせて足りない部分を補ってください。
現行シラバスでの難易度や合格率の推移は生成AIパスポートの難易度・合格率、独学の進め方は生成AIパスポートの勉強法で詳しく扱っています。
よくある質問
旧シラバスの公式テキストで2027年2月試験に合格できますか?
合否の保証はできませんが、旧テキストだけでは範囲が足りません。3章のAIエージェントと4章のガバナンス・法令は、新シラバスで大きく組み替えられています。新シラバスPDFのキーワードと照合し、足りない部分を補ってください。
試験時間や問題数、受験料は変わりますか?
今回の発表では、試験時間60分・60問・受験料11,000円(税込)の変更には触れられていません。発表されたのは出題内容(シラバス)の改訂です。変更があれば公式サイトで告知されます。
資格更新テストを受けないと資格が失効しますか?
失効しません。GUGAは、更新テストの受講有無を問わず、一度取得した生成AIパスポートの資格は無期限と明記しています。更新テストは、新しい内容を学んだことをオープンバッジで示すための任意の制度です。
新シラバスはどこで確認できますか?
GUGAの公式サイトでPDF(全10ページ)が公開されています。学習項目と詳細キーワードが章ごとに一覧になっており、最後の2ページに新旧の章構成と改訂の意図がまとめられています。
まとめ
申込を済ませていない人にとって、旧シラバスで受験する道はもう残っていません。迷う時間を減らすなら、今日のうちに新シラバスPDFを開き、3章と4章のキーワードから知らない語に印を付けるところから始めてください。申込は1月31日まで受け付けており、2月の受験期間が始まるまで約4か月あります。シャドーAIやAI法のように初めて見る語は、1度読んで終わりにせず、間隔をあけて何度か問い直すと定着します。SkillStackの自動復習のように、間違えた問題を日をおいて出し直す仕組みは、こうした語を覚えるのに向いています。
