「AIエージェントの資格が出たらしいけど、生成AIの知識を問う試験と何が違うの?」——Google Cloud の新認定 Professional Agentic Architect(PAA)を調べ始めた人が、最初に抱く疑問がこれです。PAA は「知っているか」ではなく「作って動かせるか」まで見る試験です。選択式試験に受かっても、その後のハンズオンラボを終えなければ認定されません。
ベータ版の受付は9月に終わり、公式サイトによれば一般提供(GA)の登録は11月2日に始まります。いま調べている人の多くは、GA で受けるかどうかを決める段階にいるはずです。
この記事では公式の試験ガイド原本を読み込み、5分野の出題割合を約80問のベータ試験に当てはめ、「1分野あたり何問くらいか」の参考値まで出しました。読み終えるころには、自分の経験で PAA に挑めるのか、先に別の認定を挟むべきかを判断できます。
Professional Agentic Architectとは|AIエージェントを設計・運用する人の認定
Professional Agentic Architect は、Google Cloud 上で自律的に動く AI エージェントのワークフローを設計し、運用する技術者向けの Professional 認定です。公式の試験ガイドは対象者を、LLM の活用、エージェントの設計パターンの適用、コーディング、データソースの統合に深い経験を持つ開発者・アーキテクトと定義しています。
扱う範囲は、エージェントの一生まるごとです。ローコードツールで組む、コードで作り込む、社内データにつなぐ、複数のエージェントを連携させる、評価する、本番にデプロイする、安全に統制する。どれか1つではなく、この全部が出題範囲に入ります。
Generative AI Leader との違い
同じ Google Cloud の AI 系認定でも、Generative AI Leader はビジネス視点で生成AIの活用を判断する人向けの入門寄りの認定です。PAA はその対極で、コードを書き、権限を設計し、障害を切り分ける実装者の試験です。前提資格はどちらもありませんが、想定している読者がまったく違います。
Professional Agentic Architectの試験概要|2部構成・受験料・有効期限
押さえるべき数字は、受験料200ドル、有効期限1年、そして「選択式試験+ハンズオンラボ」の2部構成です。公式の認定ページと FAQ をもとに、2026年10月7日時点の情報を整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 構成 | ①選択式試験(Pearson配信)に合格 → ②ハンズオンラボ(Google Skills)を修了して認定 |
| 受験料 | 200ドル(別途税。ベータは120ドルだった) |
| 選択式試験 | ベータは3時間・約80問。FAQ は GA を「2時間のセッション」と案内 |
| ハンズオンラボ | 選択式に合格すると解放。所要時間は5時間未満の見込み |
| 選択式試験の受験方法 | オンライン監督またはテストセンター(ラボは Google Skills 上で実施) |
| 言語 | ベータは英語のみ。GA の対応言語は未発表 |
| 前提資格 | なし |
| 推奨経験 | クラウドの構築・運用経験3年以上、うち Google Cloud でのエージェント構築1年以上 |
| 有効期限 | 1年(継続教育による維持の仕組みを用意すると FAQ に記載) |
| GA の結果通知 | 7〜10営業日(FAQ) |
ベータからGAへ|これからの日程
ベータの登録は9月3日〜30日、選択式試験は9月8日〜30日に実施されました。ベータの結果は10月末に CM Connect で公開され、合格者は2026年12月31日までにラボを終える必要があります。GA は、認定ページが11月2日の登録開始を、FAQ が11月中旬の一般公開を案内しています。
注意したいのは試験時間です。認定ページの試験詳細にはベータ仕様の「3時間・約80問」が載ったままで、FAQ は GA を2時間と説明しています。GA の問題数はまだ公表されていません。申し込む前に、認定ページの表記が GA 仕様に更新されているかを必ず確かめてください。ベータ募集当時の経緯はAgentic Architect ベータ開始の速報にまとめています。
有効期限が1年である意味
Professional Cloud Architect など他の Professional 認定の有効期限は2年です。PAA はその半分。取得した翌年には、もう維持の手続きを考えることになります。FAQ は継続教育のパスで有効な状態を保てると説明していますが、具体的な中身はまだ示されていません。
ここまで読んで「範囲が広すぎて、どこから手をつければいいか分からない」と感じたなら、それは正しい感覚です。5分野の出題割合には大きな偏りがあり、そこを知るだけで準備の順番が決まります。
出題範囲は5分野|最大の山は「カスタムエージェント開発」33%
公式の試験ガイドは、出題範囲を5つのセクションに分けています。3分の1を占めるのが、コードでエージェントを作る「カスタムエージェントの開発」です。出題割合を約80問(ベータ試験の問題数)に当てはめると、1分野あたりの問題数の感覚がつかめます。
| セクション | 出題割合 | 80問換算の参考値 | 主な内容 |
|---|---|---|---|
| 1. ローコードツールでのエージェント構築 | 約13% | 約10問 | Gemini Enterprise の Agent Designer・CX Agent Studio での状態遷移ワークフロー、システム指示とプロンプトテンプレート、社内データ・マルチモーダルデータの接続 |
| 2. コーディングエージェントの活用 | 約17% | 約14問 | MCP サーバー・スキル・ツール権限の設定、GKE や Cloud Workstations のサンドボックスでの利用、リファクタリングや脆弱性修正、Antigravity のスキル・フック・サブエージェント |
| 3. カスタムエージェントの開発 | 約33% | 約26問 | モデル選定(LLM と SLM、OSS とプロプライエタリ)、ADK での実装、セッションとメモリ、RAG とベクトル検索、Agent Identity、MCP と A2A によるマルチエージェント連携 |
| 4. エージェントの評価とデプロイ | 約22% | 約18問 | ゴールデンデータでの評価、継続的な評価パイプライン、Agent Runtime・Cloud Run・GKE の使い分け、推論ループや遅延のトラブルシュート |
| 5. セキュリティとガバナンス | 約15% | 約12問 | OAuth 2.0 によるツール呼び出しの認証、Agent Identity の PAB ポリシー、Agent Gateway、Model Armor、ヒューマン・イン・ザ・ループ |
※「80問換算の参考値」は、公式の出題割合(いずれも概算)に約80問を単純に掛けた編集部の試算です。実際の問題数や採点上の重みを示すものではなく、GA の問題数も未発表です。
試験ガイドの「対象ツール一覧」に並ぶ28項目
試験ガイドの末尾には、出題対象のツールが28項目並んでいます。ADK、Agent Runtime(旧 Agent Engine)、Agent Search(旧 Vertex AI Search)、Agent Gateway、Model Armor、RAG Engine といった Google Cloud のエージェント系サービスに加え、BigQuery・Cloud Run・Cloud SQL・Firestore といった定番サービスも入っています。
目を引くのはセクション2です。コーディングエージェントの例として Google の Antigravity と並び、「Claude Code on Google Cloud」の名前が挙がっています。AI に書かせたコードをどう安全に扱うか。それ自体が試験範囲になった、ということです。
難易度は高い|合格率は非公開、ラボが二段目の関門
PAA は、相応の実務経験がないと太刀打ちしにくい試験です。合格率や合格点は公表されていませんが、そう判断できる根拠が公式情報の中に3つあります。
- 推奨経験が重い:クラウドの実務3年以上に加え、Google Cloud でのエージェント構築1年以上。汎用のクラウド経験だけでなく、エージェント開発の経験年数まで指定されています。
- 二段階で落ちうる:選択式に受かってもラボで基準に届かなければ認定されません。暗記で埋められるのは前半だけです。
- 対象サービスが新しい:Agent Gateway や Agent Registry など、名前ごと新しいサービスが範囲に入っています。既存の参考書だけでは、新しいサービスを補いきれません。
経験別|PAAに直行するか、別の認定を挟むか
| あなたの状況 | おすすめの進め方 |
|---|---|
| Google Cloud でエージェントを本番運用している | PAA に直行。GA の登録開始を待って受験日を決める |
| Google Cloud の実務はあるが、エージェントは試作レベル | ADK で1つ作り、Agent Runtime にデプロイしてから受験を判断 |
| 他クラウドで生成AIアプリを作っている | 概念は通じる。Google Cloud 固有のサービス名と権限設計を集中的に補う |
| クラウド実務が浅い | 先に Cloud Digital Leader や Associate Cloud Engineer で Google Cloud の土台を作る |
受験回数の上限も頭に入れておきましょう。Professional 認定は2年間で4回まで。不合格なら14日後に再受験でき、2回目の不合格後は60日、3回目の後は365日待つ必要があります。受験料200ドルに加えて、この待ち時間もコストです。
Professional Agentic Architectを取るメリット
PAA を取る最大のメリットは、「AIエージェントを作れる」ことを第三者が検証した形で示せる点です。選択式試験に加えてハンズオンラボの修了まで求められるため、手を動かした経験の裏付けになります。
AI エージェントの案件では、権限・評価・監視まで設計できる人が求められます。PAA の5分野は、エージェント開発で確認すべき技術領域を洗い出すチェックリストとしても役立ちます。試験勉強の過程で、セキュリティやガバナンスといった後回しにしがちな領域を体系的に埋められる。資格そのもの以上の副産物です。
一方で、有効期限1年という短さは割り引いて考えるべき点です。更新しなければ1年で失効するため、取るなら維持の手間まで含めて計画してください。具体的な準備の手順はAgentic Architectの勉強法で解説しています。
よくある質問
Professional Agentic Architectは日本語で受験できますか?
2026年10月7日時点で、日本語での受験は発表されていません。ベータは英語のみと明記されており、GA の対応言語は公表されていません。
ベータとGAで取得できる認定は同じですか?
同じです。公式ページは、ベータでも GA でも合格すれば同じ Professional Agentic Architect 認定になると説明しています。ベータの合格者もラボの完了が条件である点は同じです。
公式のサンプル問題はありますか?
あります。認定ページの「Review sample questions」から、Google が用意したサンプル問題のフォームにアクセスできます。出題形式と問われ方の粒度を確かめるのに使えます。
前提資格は本当に不要ですか?
不要です。ただし推奨経験として、クラウドの構築・運用3年以上と Google Cloud でのエージェント構築1年以上が示されています。受験資格の制限ではありませんが、公式が準備状況の目安として示している経験です。
まとめ
Professional Agentic Architect は、AI エージェントを「作って、評価して、守る」ところまでを2段階で確かめる認定です。求められる経験は重いものの、出題の約3分の1がカスタムエージェント開発に集まっていると分かれば、準備の重心はもう決まっています。GA の登録が始まる11月2日までに、まず試験ガイドを開き、ADK で小さなエージェントを1つ動かしてみてください。英語の長い設問に慣れる前に、Google Cloud のエージェント系サービスの用語を固めておきたいなら、SkillStack の PAA 練習問題集①は無料で解けるので、分野別の正答率を見ながら弱い領域を先に洗い出せます。
参考サイト
- Google Cloud「Professional Agentic Architect Certification」(取得日: 2026年10月7日)
- Google Cloud「Professional Agentic Architect Certification exam guide」(取得日: 2026年10月7日)
- Cloud Certification Help「Professional Agentic Architect Certification FAQs」(取得日: 2026年10月7日)
- Cloud Certification Help「Retake Policy」(取得日: 2026年10月7日)
- Google Skills「Professional Agentic Architect 認定資格」学習パス(取得日: 2026年10月7日)
