名前も試験範囲もそっくりなのに、運営団体はまったくの別組織——LinuCとLPICの関係は、Linuxの資格取得を考え始めた人が最初に混乱するポイントです。結論から言えば、日本国内でインフラエンジニアのキャリアを築くならLinuC、外資系や海外案件も視野に入れるならLPICが基本線になります。
両者は2018年を境に袂を分かった経緯があり、受験料の体系、出題のトレンド、採用市場での扱われ方にも差があります。読み終える頃には、比較表と判断軸をもとに自分が受けるべき試験を決められるだけでなく、生活パターン別の早見表で「何ヶ月あれば合格に届くか」まで見積もれるようになっているはずです。
LinuCとLPICの違いを一覧で整理|まずは結論から
LinuCとLPICはどちらもLinux技術者としてのスキルを証明する資格ですが、運営団体や対象市場が異なるまったく別の試験です。最大の違いを一言でまとめると、LinuCは日本市場に最適化された資格、LPICは世界180か国以上で実施される国際標準の資格と表現できます。試験範囲は重複部分が多いものの、出題のトレンドや採用市場での扱われ方には明確な差があります。
まずは主要な比較項目を一覧で確認しましょう。
| 比較項目 | LinuC(リナック) | LPIC(エルピック) |
|---|---|---|
| 運営団体 | LPI-Japan(NPO法人エルピーアイジャパン) | LPI(Linux Professional Institute・カナダ本部) |
| 試験開始年 | 2018年 | 2001年 |
| 対象市場 | 日本国内に特化 | 世界180か国以上のグローバル基準 |
| 出題言語 | 最初から日本語で問題を作成 | 英語原文を日本語などに翻訳して出題 |
| レベル構成 | レベル1〜レベル3、システムアーキテクト | LPIC-1〜LPIC-3(LPIC-3は専門分野別の4試験) |
| 有意性/再認定サイクル | 有意性の期限5年 | 5年でActiveからInactiveステータスに(再認定でActive維持) |
| 結果通知 | 合否+スコア+項目別スコア | 合否+スコア |
「LPI-Japan」と「LPI日本支部」は別組織なので要注意
混同されやすいポイントですが、LinuCを運営するLPI-Japanと、LPICの日本国内運営を担当するLPI日本支部は、名前は似ていても異なる組織です。元々LPI-JapanはLPICの日本展開を担っていましたが、2018年にLPICの取り扱いを停止し、独自試験としてLinuCの提供を開始しました。現在、LPICの日本国内オペレーションは新設されたLPI日本支部が継続しています。
組織の経緯を押さえたら、次は費用と試験内容です。ここを曖昧なままテキストを買い始めると、「教材が対応する試験バージョンと違った」「レベル1認定には2試験の合格が必要と知らず予算が足りない」といった手戻りが起きがちで、学習を始める前のつまずきとしては意外に多いパターンです。
LinuCとLPICそれぞれの試験概要・受験料【2026年最新】
続いて、それぞれの試験概要と受験料を整理します。2024年10月にLPICの一部試験で受験料の改定(値上げ)が実施された一方、LinuCも現行のレベル3以上は受験料が高めに設定されており、コストの有利不利は目指すレベルによって変わります。
LinuCの試験概要と受験料
LinuCはレベル1からシステムアーキテクトまで4段階のレベル構成です。各試験は試験時間90分、出題数は約60問で、選択式に加えて一部キーボード入力を伴う問題が出題されます。合格基準は公式には非公開ですが、目安として正答率65〜75%程度で合格に達するとLPI-Japanは案内しています。
- レベル1:101試験+102試験の合格で認定。Linuxサーバーの基本操作と運用管理が対象
- レベル2:201試験+202試験の合格で認定。仮想環境を含む設計・構築・トラブルシューティングが対象
- レベル3:3PS(プラットフォームスペシャリスト)・3SS(セキュリティスペシャリスト)の専門分野ごとの単独試験で認定(旧体系の300/303/304試験は2026年11月30日まで受験可能)
- システムアーキテクト:4SA01試験+4SA02試験の合格で認定
受験料はレベル1・レベル2の各試験が16,500円(税込)、現行のレベル3(3PS/3SS)とシステムアーキテクトの各試験が27,500円(税込)です(旧レベル3の300/303/304試験は各16,500円(税込)のまま2026年11月30日まで受験可能)。レベル1認定までに必要なコストは2試験合計で33,000円となります。
LPICの試験概要と受験料
LPICはLPIC-1、LPIC-2、LPIC-3の3段階構成で、最上位のLPIC-3は専門分野ごとに4つの試験(300/303/305/306)から選択して受験します。各試験は90分・約60問で、選択問題と記述問題が混在する形式です。LPIC-1の合格率はおおむね60%前後とする調査もありますが、公式な発表ではない点に注意が必要です。
受験料は試験ごとに異なり、2024年10月の改定後は以下のような価格帯となっています。なお、lpi.org公式サイトの表示は税抜価格(Linux Essentials 13,000円、LPIC-1 各15,000円、LPIC-2以降 各18,000円)のため、以下は消費税10%を加えた税込換算の金額です。
- Linux Essentials:14,300円(税込換算)
- LPIC-1(101/102試験):各16,500円(税込換算)
- LPIC-2(201/202試験)、LPIC-3、DevOps Tools:各19,800円(税込換算)
レベル別の受験料を直接比較
同じレベルでもLinuCとLPICで受験料に差があります。下表で並べて確認しましょう。
| 認定レベル | LinuCの合計受験料(税込) | LPICの合計受験料(税込換算) |
|---|---|---|
| レベル1認定(2試験合計) | 33,000円 | 33,000円 |
| レベル2認定(2試験合計) | 33,000円 | 39,600円 |
| レベル3(1試験あたり) | 27,500円(現行3PS/3SS) | 19,800円 |
レベル1では同額、レベル2ではLinuCのほうが6,600円安い一方、レベル3の現行試験ではLPICのほうが安くなります。どのレベルまで取得を目指すかで、コストの有利不利が入れ替わる構造です。
難易度と合格率を比較|どちらが取りやすい?
LinuCとLPICの試験範囲はかなり重複しており、難易度そのものに大きな差はないとされています。両資格とも公式な合格率は公表されていませんが、レベル1でおおむね60〜65%、レベル2以降は実務経験の差が結果に反映されやすい傾向があります。学習時間の一般的な目安としては、未経験者でレベル1が80〜100時間前後、レベル2が200時間以上といわれています。
学習時間80〜100時間を生活パターン別に逆算すると
「80〜100時間」という数字は、週あたりの学習時間で割ると自分の合格時期に変換できます。学習期間が半年を超えると中だるみで挫折しやすいため、可能なら3ヶ月前後に収まる配分を選ぶのが現実的です。
| 学習ペース | 週あたりの学習時間 | 80〜100時間到達の目安 |
|---|---|---|
| 平日30分+休日1時間 | 約4.5時間 | 約4〜5ヶ月 |
| 平日1時間+休日2時間 | 約9時間 | 約2〜3ヶ月 |
| 平日2時間+休日2時間 | 約14時間 | 約1.5〜2ヶ月 |
逆算してみると、平日まとまった時間が取れない社会人でも、通勤や昼休みの細切れ時間を合算すれば「平日1時間」は現実的な数字です。期間を決めてから1週間の時間割に落とす——この順番で計画すると息切れしにくくなります。
未経験者にとってのハードルはLinuCのほうが低い
未経験から受験する場合、問題文の読みやすさが学習効率に影響します。LinuCは最初から自然な日本語で問題が作成されているのに対し、LPICは英語原文を翻訳しているため、表現が硬く感じる箇所があります。技術用語に慣れていない学習初期では、LinuCのほうが内容理解に集中しやすいという声が多く聞かれます。
LinuCはクラウド・コンテナの出題比重が高い
2020年4月に提供開始されたLinuCのVersion10.0以降は、仮想化・クラウド・コンテナといった現代的なトピックが大幅に強化されています。AWSやKubernetesを扱う国内インフラ現場の実情に近い内容となっており、学習成果がそのまま実務スキルにつながりやすい構成です。LPICもクラウド領域はカバーしていますが、ディストリビューション非依存の汎用知識を重視する設計のため、出題比重には差が出ます。
目的別「LinuCとLPICどっちを取るべきか」判断軸
結論として、どちらを取るべきかは自分のキャリアゴールによって変わります。両資格とも一定の難易度をクリアした証明として企業に評価されるため、優劣で選ぶよりも「目指す市場」と「働きたい環境」を起点に決めるのが合理的です。
国内SIer・社内SEを目指すならLinuC
KDDI、NEC、TIS、日立ソリューションズなど、国内の大手SIerや事業会社の中にはLinuC取得を推奨・推進する企業が増えています。日本市場の運用ニーズに即した出題内容で、国内のインフラ案件にすぐ活かせる点が評価されています。国内志向であれば、まずLinuCレベル1からのスタートが王道です。インフラ系の他資格との組み合わせはインフラエンジニアが取るべき資格10選で確認できます。
外資系・海外勤務・グローバル案件ならLPIC
世界180か国以上で実施されているLPICは、外資系企業や海外プロジェクトでの評価指標として通用しやすい資格です。英語で受験することも可能なため、語学力のアピールにもつながります。将来的に海外で働く選択肢を残しておきたい方や、外資系のインフラポジションを狙う方にはLPICが向いています。
迷ったら求人票を確認するのが確実
判断に迷う場合は、志望する企業の求人票や採用ページで「LinuC」「LPIC」どちらが明記されているかを確認するのが最も確実な方法です。同業他社が両方を併記しているケースも珍しくありませんが、自社研修としてどちらかの取得を推進している企業もあります。学習に取りかかる前に5〜10社の求人を眺めておくと、選ぶべき資格が自然と見えてきます。
なお、どちらを選んでも合否を分けるのは演習量です。テキストを通読するだけでは手が覚えず、問題を解いて間違え、解説で理解し直すサイクルを何周も回すことで初めてコマンドが定着します。覚え方のコツは暗記が苦手でもIT資格に受かる記憶術も参考になります。
まとめ
LinuCとLPICは優劣で選ぶ資格ではなく、「働きたい市場」で選ぶ資格です。国内SIer・社内SE志望ならLinuC、外資・海外志向ならLPIC——試験範囲の重複が大きいぶん、この軸さえ決めてしまえば後からの乗り換えも致命傷にはなりません。受験料はレベル2までならLinuCが同額か安く、日本語が自然で未経験者が取り組みやすいのもLinuCという細部も、迷ったときの判断材料になります。
それでも決めきれないなら、志望企業の求人票を5〜10社確認し、記載の多いほうから着手してください。80〜100時間という学習時間はまとまった休みを待つより日々の細切れで積むほうが現実的で、通勤や昼休みの20分にスマホで1問から解けるSkillStackを組み合わせれば、机に向かえない日でも演習量をゼロにせずに済みます。合格をゴールにせず、仮想環境での実機操作と並行しながら、現場で通用するLinuxスキルに育てていきましょう。

