OSS-DB Silver勉強法を調べて教材を買い、1章のインストールから順に読み進める。ところが試験の1週間前になっても、重要度が最も高い SQL の章が手つかずのまま——この状態では、重要な項目を取りこぼしたまま本番を迎えます。原因は努力不足ではなく、時間の配り方にあります。
公式の出題範囲には、項目ごとに「重要度」が付いています。合計はちょうど50。出題数の約50問との1対1の対応は公表されていませんが、学習の重みづけには十分使えます。この数字で学習時間を割り振り、PostgreSQL を実際に動かしながら覚えると、ページ順に読むより迷わず合格ラインに近づけます。
読み終えるころには、自分の経験に合った総学習時間と、項目ごとに何時間かけるかの配分表が手に入ります。PostgreSQL と Oracle の違いで取り違えやすい論点や、途中で手が止まったときの立て直し方も分かります。
勉強を始める前に|Ver.3.0の教材とPostgreSQL 14の練習環境をそろえる
最初にそろえるのは、Ver.3.0 対応の教材と、PostgreSQL 14 の練習環境の2つです。Ver.3.0 は2023年2月1日にリリースされた現行の出題範囲で、PostgreSQL 12〜14 を基準にしています。受験料や試験の全体像はOSS-DB Silverとは|難易度・受験料・出題範囲で整理しています。
教材は「Ver.3.0対応」の表記を確かめる
Ver.3.0 では JSON・JSONB、ストリーミングレプリケーションとロジカルレプリケーションの基本、非排他的低レベルバックアップなどが加わりました。Ver.2.0 向けの教材では、これらが試験範囲として扱われていない可能性があります。公式サイトの「学習教材・教育機関のご紹介」に Ver.3.0 対応の認定教材が並んでいるので、そこから選ぶと確実です。
LPI-Japan が無償公開している「オープンソースデータベース標準教科書」は、SQL を実習形式で学べる入門書です。ただし公式も、出題範囲のすべてを網羅してはいないと注記しています。SQL の入口として使い、試験対策は認定教材で補う組み合わせが合います。
練習環境は PostgreSQL 14 を選ぶ
最新の PostgreSQL 18 で練習すると、試験とずれる箇所があります。代表例がバックアップの関数です。出題範囲に載っている pg_start_backup() と pg_stop_backup() は、PostgreSQL 15 で pg_backup_start() と pg_backup_stop() に名前が変わりました。試験範囲の基準に合わせて 14 を入れておけば、バージョンによる関数名や手順のずれを減らせます。
PostgreSQL 14 のサポートは2026年11月12日に終了予定です。学習にはコンテナや仮想マシンなど外部に公開しない環境で使い、新しく業務で採用する版とは分けて考えてください。
環境が整っても、つまずきはその先にあります。教材を2周しても、どの項目がどれだけ解けるのかが分からない。演習の記録を残していないと、本番直前に「全部なんとなく分かるが、自信はない」状態に陥ります。
OSS-DB Silver勉強法|合格までの5ステップ
合格までの道筋は5ステップです。肝は、教材のページ順ではなく重要度の順に時間をかける STEP1 と、SQL を手で動かす STEP2 にあります。各ステップの期間は6週間コースの例です。
STEP1:重要度で学習時間を配分する(1日)
次の章の逆算表で総学習時間を決め、項目ごとの時間を割り振ります。出題範囲の「重要な用語、コマンド、パラメータなど」の欄に「説明できる/見たことはある/知らない」の3段階で印を付けると、どこを厚くするかが決まります。
STEP2:SQL を手で動かす(約2週間)
重要度13の「S3.1 SQLコマンド」から始めます。SELECT・INSERT・UPDATE・DELETE に加え、テーブル定義、インデックス、ビュー、マテリアライズドビュー、トリガー、パーティション、PL/pgSQL まで範囲は広めです。psql で1つずつ実行し、エラーが出たらその理由まで確かめてください。結果がすぐ返る SQL は、手応えを得やすい入口でもあります。
STEP3:運用管理のコマンドを実際に打つ(約2週間)
運用管理は範囲の52%を占めます。initdb でデータベースクラスタを作り、pg_ctl で起動と停止、createuser と createdb でユーザーとデータベースを作成。pg_hba.conf を書き換えて接続を拒否させ、pg_dump -Fc で取ったバックアップを pg_restore で戻す(既定のプレーン SQL 形式なら psql で戻す)。教材の図が、自分の操作と結びつく段階です。
STEP4:50問単位の演習で弱点を特定する(約1週間)
問題集を解き、間違えた問題を出題範囲の項目に振り分けて記録します。SkillStack の OSS-DB Silver Ver.3.0 練習問題集は①〜⑤の5セットで、どのセットも、本番と同規模の50問です。1セットごとに項目別の誤答数を数え、多い項目から STEP2・STEP3 に戻ります。
STEP5:本番形式で仕上げる(約1週間)
最後の1週間は、50問を時間を計って通しで解きます。公式の英語版試験概要は、試験時間を「試験後の簡単なアンケートを含めて90分」と案内しています(日本語版の試験概要ページには記載なし)。予約画面で時間を確かめたうえで、1問あたり90秒前後を目安に練習してください。
学習時間は重要度で配分する|60時間の逆算表
項目ごとの学習時間は「総学習時間 × 重要度 ÷ 50」で出せます。重要度の合計50を分野ごとに分けると8・26・16で、公式の出題構成16%・52%・32%と一致するため、時間配分の物差しとして使えます。下の表は、総学習時間を60時間とした場合の配分です。
| 項目 | 重要度 | 60時間の配分 |
|---|---|---|
| S3.1 SQLコマンド | 13 | 15.6時間 |
| S2.4 バックアップ方法 | 7 | 8.4時間 |
| S2.5 基本的な運用管理作業 | 7 | 8.4時間 |
| S2.2 標準付属ツールの使い方 | 5 | 6時間 |
| S2.3 設定ファイル | 5 | 6時間 |
| S1.1 OSS-DBの一般的特徴 | 4 | 4.8時間 |
| S1.2 リレーショナルデータベースに関する一般知識 | 4 | 4.8時間 |
| S2.1 インストール方法 | 2 | 2.4時間 |
| S3.2 組み込み関数 | 2 | 2.4時間 |
| S3.3 トランザクションの概念 | 1 | 1.2時間 |
※公式は重要度と出題数の対応を明言していません。表は重要度を重みの目安として使った編集部の配分です。インストール方法は重要度2ですが、練習環境を作る過程で自然に身につきます。
総学習時間は経験で決める
公式の目安は2つあります。試験概要ページは「3か月〜半年程度」、FAQ は「他の RDBMS 経験者は2週間程度、未経験なら1ヶ月程度」です。幅が大きいので、編集部は経験別に次のモデルを置きました。
| あなたの経験 | 総学習時間のモデル | 2026年10月第2週に始めた場合の受験時期 |
|---|---|---|
| Oracle など他の RDBMS を運用している | 約4週間(約40時間) | 11月中旬 |
| SQL は書けるが運用は未経験 | 約6週間(約60時間) | 11月下旬 |
| データベース自体が初めて | 約10週間(約100時間)。最初の3週間は標準教科書で SQL に慣れる | 12月下旬 |
※平日1時間・休日2.5時間(週約10時間)を想定した編集部の目安です。STEP1 の自己診断で「知らない」が多ければ、1段下の行で見積もってください。
分野別の対策ポイント|取り違えやすい論点
選択肢を読むときは「どこを疑うか」を先に知っておくと、迷う時間が減ります。下の表は、PostgreSQL の仕様のうち取り違えやすいものを編集部が項目別に整理したものです。
| 項目 | 疑うべきポイント(編集部の整理) |
|---|---|
| S2.1 インストール方法 | CREATE DATABASE は既定で template1 をコピーする。template0 は手を加えない素のテンプレートで、別の文字コードやロケールで作るときに使う |
| S2.2 標準付属ツール | createuser・createdb は SQL の CREATE ROLE・CREATE DATABASE を実行するラッパー。pg_isready は接続の受付状態を調べるコマンドで、認証に成功してセッションを確立する必要はない |
| S2.3 設定ファイル | pg_hba.conf は上から順に評価され、最初に一致した行だけが使われる。pg_hba.conf の変更は reload で反映されるが、listen_addresses や max_connections のように再起動が必要なパラメータもある |
| S2.4 バックアップ方法 | pg_dump は1つのデータベースが対象で、ロールなどクラスタ全体の情報は含まない。pg_dumpall はクラスタ全体をプレーンな SQL で出力し、psql で戻す。ファイル名を指定した SQL の COPY はサーバー側、psql の \copy は psql を実行するクライアント側のファイルを読み書きする |
| S2.5 基本的な運用管理作業 | 通常の VACUUM は不要領域を原則としてテーブル内で再利用できるようにし、SELECT や INSERT・UPDATE・DELETE と並行して動く。VACUUM FULL は ACCESS EXCLUSIVE ロックを取ってテーブルを書き直し、領域を OS に返すが、その間は読み書きできない。ANALYZE は統計情報を更新する |
| S3.1 SQLコマンド | 引用符で囲まない識別子は小文字に変換される。マテリアライズドビューは REFRESH MATERIALIZED VIEW を実行するまで中身が更新されない。JSONB は重複キーを残さず、キーの順序も保持しない |
| S3.2 組み込み関数 | 文字列連結の || は、どちらかが NULL なら結果も NULL になる。count(*) は NULL を含む行も数え、count(列名) は NULL を数えない |
| S3.3 トランザクションの概念 | 既定の分離レベルはリードコミッティド。トランザクション中にエラーが起きると、以降の文は ROLLBACK するまで受け付けられない。SAVEPOINT まで戻せば続行できる |
Oracle 経験者が特に間違えやすい点
PostgreSQL では、CREATE TABLE などの多くの DDL をトランザクションの中で実行でき、ROLLBACK で取り消せます。DDL の前後で暗黙に COMMIT される Oracle Database とは逆の挙動です。Oracle 側の論点はORACLE MASTER Silverの勉強法で整理しているので、両方を学ぶ人は違いを表にして並べておくと混同を防げます。
本番の解き方|約50問を最後まで解き切る
公式の試験概要ページは、日本語版・英語版ともに「マウスによる選択がほとんどで、キーボード入力問題も多少出る」と案内しています。一方、公式 FAQ は解答形式を「単一選択」と個数指定の「複数選択」とし、入力させる形式はないと答えており、ページによって記述が分かれます。どちらでも困らないよう、コマンド名やパラメータ名はつづりまで書ける状態にしておくと安心です。
- 1周目(50分):1問60秒前後で全問に答える。迷った問題は最も有力な選択肢を選んで印を付け、先へ進む
- 2周目(25分):印を付けた問題に戻り、選択肢を1つずつ根拠付きで消していく
- 最終確認(残り時間):複数選択の問題で、指定された個数を選んでいるかを確かめる
※配分は、公式英語版が案内する「アンケート込みで90分」を前提にした編集部の目安です。アンケートの分を残すため、解答は80分以内に終える想定にしています。
テストセンターで受けた場合は、終了ボタンを押すとその場で結果が表示されます。再受験の規定はなく、不合格でも当日から受け直せますが、受験料は毎回16,500円(税込)かかります。
挫折する人はどこでつまずくか|3つの失敗パターンとリカバリ
つまずきは、ページ順に読む、最新版だけで練習する、答えを覚える、の3つに分けられます。どれも気づいた時点で手順を1つ戻せば立て直せます。
失敗1:インストールの章で2週間が過ぎる
教材の1章から丁寧に進め、重要度2のインストール方法に時間を使いすぎるパターンです。リカバリは、逆算表に戻って残り時間を重要度で割り直すこと。SQLコマンドと、バックアップ・基本的な運用管理作業の3項目を先に終わらせます。
失敗2:最新版で練習して関数名を取り違える
PostgreSQL 18 だけで練習し、本番で pg_start_backup() を見て戸惑うパターンです。手元の版と試験の基準がずれている項目は、教材の記述を正として覚えます。バックアップと recovery.signal の周辺は、14の環境で一度手順を通しておくと確実です。
失敗3:問題集の答えを覚えてしまう
同じセットを何周もすると、問題文を見ただけで答えが浮かびます。正答率は9割でも、聞き方が変わると対応できないことがあります。2周目以降は、正解した問題でも「他の選択肢はなぜ違うか」を一言で言えるかを確かめてください。
よくある質問
OSS-DB Silver は実機なしで合格できますか?
選択問題が中心なので、実機なしでも合格は目指せます。ただ、pg_hba.conf の評価順や VACUUM と VACUUM FULL の違いは、一度動かすと記憶に残りやすくなります。キーボード入力問題も多少出るため、コマンドを打った経験は本番でも役立ちます。
公式の例題はどこで解けますか?
OSS-DB 公式サイトの「例題解説」に、S1 一般知識・S2 運用管理・S3 開発/SQL の分野別に例題と解説がまとめられています。教材を1周したあと、出題の雰囲気をつかむのに向いています。
Silver に合格したら次は何を目指せばいいですか?
PostgreSQL の運用を深めるなら OSS-DB Gold が次の段階です。Gold は性能監視やチューニング、障害対応まで問われ、認定には有意な Silver が必要です。対策はOSS-DB Goldの勉強法で紹介しています。
まとめ
OSS-DB Silver の勉強は、教材を1ページ目から読むより、重要度50ポイントで時間を配ったほうが迷いません。今日やることは2つです。総学習時間を決めて配分表を作ること、そして PostgreSQL 14 を入れて最初の SELECT 文を1本動かすこと。演習に入ったら、SkillStack の分野別の正答率を配分表の隣に置いてみてください。重要度が高いのに正答率が低い項目が一目で分かり、残りの時間をどこへ回すかがすぐ決まります。
参考サイト
- LPI-Japan「OSS-DB Silverのご紹介」(取得日: 2026年10月7日)
- LPI-Japan「OSS-DB Silver(English)」(取得日: 2026年10月7日)
- LPI-Japan「OSS-DB技術者認定試験の出題範囲改定(Ver.3.0)について」(取得日: 2026年10月7日)
- LPI-Japan「よくある質問」(取得日: 2026年10月7日)
- LPI-Japan「学習教材・教育機関のご紹介」(取得日: 2026年10月7日)
- LPI-Japan「オープンソースデータベース標準教科書」(取得日: 2026年10月7日)
- LPI-Japan「例題解説」(取得日: 2026年10月7日)
- ピアソンVUE「OSS-DB技術者認定試験」(取得日: 2026年10月7日)
- PostgreSQL Global Development Group「Versioning Policy」(取得日: 2026年10月7日)
- PostgreSQL Global Development Group「Release 15」(取得日: 2026年10月7日)
- PostgreSQL 14 Documentation「The pg_hba.conf File」(取得日: 2026年10月7日)
- PostgreSQL 14 Documentation「pg_dump」(取得日: 2026年10月7日)
- PostgreSQL 14 Documentation「Routine Vacuuming」(取得日: 2026年10月7日)
- PostgreSQL 14 Documentation「Transaction Isolation」(取得日: 2026年10月7日)
