「SAAは取った。次はSAPに行くべきか、それとも別の資格か」——AWS SAP(Solutions Architect - Professional)は、AWS認定で設計を扱う最上位の試験です。75問を180分で解き、1,000点満点中750点で合格。数字だけ見ればSAAと同じ合格ラインですが、問われるのは単一システムではなく、複数アカウント・複数リージョンにまたがる組織全体の設計です。
しかも2026年は特別な年です。11月16日で現行のSAP-C02が終わり、翌17日から新版SAP-C03が始まります。出題分野は4つから5つへ組み替わり、生成AIやレジリエンス工学が加わります。先に方針を言えば、C02の対策が仕上がっている人は現行版で受け切り、これから始める人は10月27日に出るC03の試験ガイドを見てから計画するのが基本です。以下では、その判断に必要な試験の中身とSAAとの違いを、AWSの公式情報に編集部の分析を加えて整理します。
AWS SAPとは——複数アカウントの組織を設計する上位資格
AWS SAPは、ソリューションアーキテクトの役割を担う人が、AWS Well-Architected Frameworkに沿って最適化された設計をできるかを検証する試験です。AWS認定のProfessional(プロフェッショナル)区分に属し、設計系ではSAA(アソシエイト)の一段上にあたります。
公式の試験ガイドは、想定受験者を「AWSを使ったクラウドソリューションの設計・実装に2年以上の経験がある人」としています。さらに、複雑な組織の中で複数のアプリケーションやプロジェクトにまたがる設計の指針を示せること。ここがSAAとの決定的な差です。
SAAとSAPの違いは「設計の単位」の広さ
SAAも設計の試験ですが、公式ガイドがSAPにだけ明示しているのが「複雑な組織で、複数のアプリケーションやプロジェクトにまたがる設計と助言」です。SAPでは前提が一段広がります。数十のAWSアカウントをAWS Organizationsでどう束ねるか。オンプレミスの数百台をどの順番で移すか。既存システムのコストと運用負荷をどう下げるか。正解の選択肢が1つの構成図ではなく「組織としての方針」になる問題が増えます。
| 比較項目 | SAA(Associate) | SAP(Professional) |
|---|---|---|
| 想定経験 | AWSでの設計経験1年程度 | AWSでの設計・実装経験2年以上 |
| 設計の単位 | 主に個々のソリューション | 複数アカウント・複数プロジェクト・組織全体 |
| 主な論点 | 可用性・性能・コスト・セキュリティの基本構成 | ガバナンス、大規模移行、既存環境の継続改善 |
| 受験料(日本円) | 20,000円(税が適用される場合あり) | 40,000円(税が適用される場合あり) |
受験料はAWS公式の料金ページでProfessionalが40,000円(税が適用される場合あり)、ドル建てでは300 USDです。SAAの2倍で、再受験にも同額がかかります。受験時期は慎重に決めたいところです。
では、その40,000円で何を問われるのか。仕様を数字で確認しておくと、必要な準備の量が見えてきます。そして多くの人がここで「範囲が広すぎて、どこから手をつければいいか分からない」と立ち止まります。
SAP-C02の試験仕様:75問・180分・合格750点
現行のSAP-C02は、75問・180分・合格スコア750点です。75問のうち採点されるのは65問で、残り10問はAWSが将来の出題候補を試すための採点対象外の問題。本番ではどれが採点外か見分けられません。
| 項目 | 内容(2026年10月5日時点) |
|---|---|
| 試験コード | SAP-C02(2026年11月16日まで) |
| 問題数・時間 | 75問(採点対象65問+採点対象外10問)・180分 |
| 出題形式 | 択一選択(4つから1つ)/複数選択(5つ以上から2つ以上) |
| スコア | 100〜1,000点の換算スコア、合格750点 |
| 受験料 | 40,000円(税が適用される場合あり)/300 USD |
| 受験方法 | ピアソンVUEのテストセンター、またはオンライン監督 |
| 言語 | 英語・日本語・韓国語・ポルトガル語(ブラジル)・中国語(簡体字)・スペイン語(ラテンアメリカ) |
| 有効期間 | 3年間 |
180分を75問で割ると、1問あたり2.4分。SAAは130分・65問で1問2分なので、時間の余裕はわずかに増えます。ただ、SAPの問題文は前提条件が多く、選択肢も構成全体を記述した長文になりがちです。「時間が増えた」というより、読む量に追われる可能性が高い試験です。
出題は4分野。配点は「複雑な組織に対応するソリューションの設計」26%、「新しいソリューションのための設計」29%、「既存のソリューションの継続的な改善」25%、「ワークロードの移行とモダナイゼーションの加速」20%です。
最小の分野でも20%。採点対象65問に単純に当てはめると、どの分野からも13問前後が出る計算です。合格に必要な正答数は換算方式が非公開のため算出できませんが、1分野を丸ごと捨てるのは大きな賭けになります。
分野ごとの足切りはない(補正スコア方式)
合否は合計スコアだけで決まります。公式ガイドが「compensatory scoring model」と呼ぶ方式で、分野ごとに合格点を超える必要はありません。苦手な移行分野を、得意な新規設計分野で取り返す戦い方が成り立ちます。
試験ガイドに「採点されない新トピック」が載っている
見落とされがちなのが、SAP-C02の試験ガイドにある「Emerging Topics」の項目です。生成AIのコンテンツフィルタリング(Amazon Bedrock Guardrailsなど)、AIエージェントのアクセス制御(AgentCore Identity)、AWS Step Functionsを使った人による承認フローが挙がっています。
ガイドはこれらを「採点に影響しない事前テスト問題として出る可能性がある」と明記しています。C02で受けるなら、ここに時間を割く必要はありません。ただし同じテーマがC03では正式な出題範囲に入ります。次の章で見るとおりです。
SAP-C03で何が変わるか——4分野から5分野へ
2026年11月17日から始まるSAP-C03は、分野の切り方そのものが変わります。AWSが9月1日の公式ブログで公表した新しい5分野は次のとおりです。配点は、登録開始と同じ10月27日に公開される試験ガイドで明らかになります。
| SAP-C02(4分野) | SAP-C03(5分野) |
|---|---|
| 複雑な組織に対応するソリューションの設計 | クラウドネイティブなアーキテクチャの設計と実装 |
| 新しいソリューションのための設計 | セキュリティ、コンプライアンス、ガバナンス |
| 既存のソリューションの継続的な改善 | コスト最適化されたアーキテクチャ設計 |
| ワークロードの移行とモダナイゼーションの加速 | レジリエンス、移行、事業継続 |
| — | 運用上の優秀性と自動化 |
表の左右は、各行が1対1で対応しているわけではありません。C02は「組織/新規/既存/移行」という仕事の場面で分けていました。C03は「セキュリティ/コスト/レジリエンス/運用」というWell-Architectedの観点に近い軸で切り直しています。移行はレジリエンス・事業継続と同じ分野に統合されました。
新しく加わるスキルは5系統
AWSは追加内容を系統ごとに示しています。数字はAWSが公表した新スキルの数です。
- 生成AI・エージェント型AI(11スキル):Amazon Bedrockを使った生成AI統合、Amazon Bedrock AgentCoreによるエージェント設計、RAG、Bedrock Guardrails、AI運用の人による監督フロー
- レジリエンス工学:AWS Fault Injection Service、AWS Resilience Hub、AWS Application Recovery Controller、Systems Managerによる自動化ランブック
- クラウドネイティブパターン(7スキル):サーバーレスのデータパイプライン、Step Functionsの永続ワークフロー、Amazon VPC LatticeとAmazon ECS Service Connectによるサービスメッシュ、コンテナイメージのセキュリティ、マルチテナント設計
- DevSecOpsと可観測性(6スキル):パイプラインの脆弱性スキャン、マルチアカウントのデプロイパイプライン、コンテナやAI/MLのメトリクス監視、合成監視・実ユーザー監視
- データ分析(3スキル):AWS Lake FormationとApache Icebergによるレイクハウス、リアルタイム・バッチ分析、AWS Clean Roomsによるアカウント間のデータ共有
このほか、AWS KMSのML-DSA・ML-KEMを使った耐量子暗号も挙がっています。C02の試験ガイドで「採点外の新トピック」だった生成AIの統制は、C03で正式な出題範囲に格上げされる形です。
一方で、AWSは既存のタスクとスキルを「現在の業界慣行に合わせて更新しつつ、中核となる設計能力は維持する」と説明しています。Organizationsでのマルチアカウント設計や、ハイブリッド接続、移行戦略といったC02の主軸が消えるわけではありません。
C02で受け切るか、C03を待つか——判断の目安
編集部の見解として、すでにC02の模擬問題で合格圏にいるなら11月16日までに受け、まだ全範囲を一巡していないならC03に照準を合わせるのが合理的です。今日(10月5日)からC02の最終日までは42日。不合格後は14日間再受験できない規定なので、再受験の余地を残すなら、初回は規定上11月2日が最遅です。予約枠は保証されないため、実際にはもっと早めが安全です。
| あなたの状況 | 選ぶ版 | 理由 |
|---|---|---|
| 模擬問題で安定して750点相当を超えている | SAP-C02 | 11月2日までに受ければ、落ちても最終日にもう1回挑戦できる |
| 4分野のうち手つかずが2つ以上ある | SAP-C03 | 11月2日までの約4週間で4分野を仕上げるより、新ガイドで組み直す方が無駄がない |
| 生成AIやコンテナを業務で触っている | SAP-C03 | 新しく加わる系統で、実務経験を活かせる可能性がある |
| オンプレ移行や大規模ネットワークが得意 | SAP-C02 | C02は移行分野が20%と明示されている。C03での比重は10月27日の配点公開まで不明 |
| 認定の更新が目的で、期限は来年以降 | SAP-C03 | 10月27日の新ガイドを見てから計画を立てられる |
なお最終日は、AWS公式ブログと英語版の認定ページが11月16日、日本語版の認定ページが11月17日と表記が分かれています(10月5日確認)。11月16日を最終日として動けば、どちらが正しくても取り逃しません。
どちらで合格しても、認定名は同じAWS Certified Solutions Architect - Professionalで、有効期間は3年です。AWSも「C02で取得した認定は元の有効期限まで有効」と明言しています。日程と再受験の逆算は、SAP-C03改定の日程と最終受験日の整理で詳しく扱っています。
SAPの難易度——どこで点を落とすのか
AWSは合格率を公表していません。そのため「合格率◯%」という数字で難易度を語ることはできません。代わりに、試験の構造から難しさの正体を3つに分解できます。
1. 選択肢がどれも「動く構成」になっている
SAAでは、明らかに要件を満たさない選択肢を消せば正解が残る問題が多くあります。SAPでは技術的に成立して見える構成が複数並ぶことがあり、「運用負荷が最も少ない」「コストが最も低い」「最短で移行できる」といった条件で1つに絞らせます。設問の最後の一文を読み落とすと、それだけで外します。
2. 複数選択で部分点がない
公式ガイドは、複数選択問題は正解をすべて選ばないと得点にならないと定めています。3つ選ぶ問題で2つ正解しても0点です。
3. 180分の集中力
1問2.4分のペースを3時間維持する必要があります。後半で読み飛ばしが増えるなら、知識不足だけでなく疲労も疑うべきです。演習の段階から、長文の問題を時間を計って連続で解く練習をしておかないと、本番で初めてこの壁に当たります。
AWS認定全体の中でSAPがどの位置にあるかは、AWS資格の難易度ランキングと取得順で他の認定と並べて確認できます。
よくある質問
SAAを持っていなくてもSAPは受験できますか
受験できます。AWS認定には受験資格の制限がなく、SAAの取得は前提条件ではありません。ただし公式ガイドが想定するのはAWSでの設計経験2年以上の人です。基礎のサービス知識を飛ばすと、SAPの長文の前提条件を読み解く段階でつまずきます。
SAPは日本語で受験できますか
受験できます。現行のSAP-C02は日本語を含む6言語で提供されています。AWSは、SAP-C03もリリース時点で現在サポートしている全言語で提供すると発表しています。
SAPの資格に有効期限はありますか
取得日から3年間有効です。最新版の試験に合格すれば3年間更新でき、条件を満たせばAWS Skill Builderの学習で1年間維持する経路もあります(有料サブスクリプションが必要)。条件はAWS資格の有効期限と更新方法にまとめています。
SAPを持っていると下位資格はどうなりますか
AWSの再認定ページでは、SAAの更新方法のひとつに「SAP試験に合格する」が挙がっています。有効なSAAを持っていれば、SAPに合格した日を基準にSAAも3年間更新されます。SAAを別途受け直さずに済む点は、SAPを取る実利のひとつです。
まとめ
SAPは、75問・180分・750点という外枠こそSAAと似ていますが、問われる単位が「1つのシステム」から「組織全体」へ跳ね上がる試験です。2026年はさらに、11月17日を境に分野の切り方まで変わります。まず決めるべきは、C02で受け切るかC03を待つか。その判断材料は、現行の4分野それぞれで自分が何割取れているかという一点です。SkillStackでは問題を解くたびに分野ごとの正答率が出るので、26%・29%・25%・20%のどこが穴なのかを数日の演習で確かめてから、残り42日の使い方を決められます。
参考サイト
- AWS Certified Solutions Architect - Professional(AWS公式・取得日: 2026年10月5日)
- AWS Certified Solutions Architect - Professional (SAP-C02) 試験ガイド(AWS公式・取得日: 2026年10月5日)
- Certification updates from AWS Training and Certification: September 2026(AWS公式ブログ・取得日: 2026年10月5日)
- AWS認定ソリューションアーキテクト – プロフェッショナル(AWS公式・日本語・取得日: 2026年10月5日)
- AWS Certified Solutions Architect - Associate (SAA-C03) 試験ガイド(AWS公式・取得日: 2026年10月5日)
- AWS認定 試験の前に|試験料金(AWS公式・取得日: 2026年10月5日)
- AWS認定 受験後のポリシー(AWS公式・取得日: 2026年10月5日)
- AWS再認定(AWS公式・取得日: 2026年10月5日)
