基本情報技術者試験の新しいシラバス案に、MCP(Model Context Protocol)という言葉が載りました。2026年9月30日、IPAが2027年度からの新試験制度に向けて、基本情報技術者試験(FE)と情報セキュリティマネジメント試験(SG)のシラバス案 Ver.0.1 を同時に公表しています。8月末にITパスポートの案が出てから1か月、受験者数の多い2区分についても、小分類・用語例まで具体化した資料がようやく出そろいました。
先に結論を言うと、試験の外形は据え置きの予定です。基本情報は科目A 60問・90分、科目B 20問・100分。SGは合わせて120分で、科目A 48問・科目B 12問。どちらも現行と同じ数字です。変わる見込みなのは中身のほうで、基本情報の案では重点分野が「システムの開発・運用」の3中分類に絞られ、AIエージェントやゼロトラストといった、現行版の本文に見当たらない用語が並びました。
この記事を読み終えると、公表資料から読み取れることと、まだ発表されていないことを分けて整理できます。そのうえで、2026年12月27日までに現行試験で受け切るか、新制度を待つかを自分の状況で判断できるようになります。分類名と数字は、すべてIPAの公表資料から直接拾いました。
9月30日に出たのは基本情報とSGのシラバス案 Ver.0.1
IPAが9月30日に「新試験制度のシラバス案について」のページへ追加したのは、次の3つの資料です。いずれも Ver.0.1 です。
- 基本情報技術者試験 シラバス(案)Ver.0.1(36ページ)
- 情報セキュリティマネジメント試験 シラバス(案)Ver.0.1(25ページ)
- プロフェッショナルデジタルスキル試験(仮称)及び情報処理安全確保支援士試験 科目A-1(共通知識)シラバス(案)Ver.0.1
8月31日にはITパスポート、データマネジメント試験(仮称)、情報処理安全確保支援士試験のシラバス案が出ていました。今回の追加で、残る「準備中」はプロフェッショナルデジタルスキル(データ・AI)試験(仮称)の1区分だけです。一方、サンプル問題のページは8月31日の更新が最後で、基本情報とSGのサンプル問題は掲載されていません。
資料の性格も押さえておきましょう。表紙には「本資料の内容は公表時点の検討状況に基づくものであり,変更する可能性があります」とあります。プロフェッショナルデジタルスキル試験のシラバス案が Ver.0.1 から Ver.0.2 に改められた前例もあり、今回の内容も確定版ではありません。
困るのは、案が出たことで「今の教材は古くなるのでは」と手が止まりやすいことです。手元の参考書は現行シラバス準拠のまま、新制度の情報は小出しに届く。どこまでを今の勉強の範囲にすればいいのか分からない、という迷いが生まれます。
いつから変わる? 2027年度春頃から、時間と問題数は据え置き
新制度の基本情報とSGは、2027年度春頃に始まる予定です。ITパスポートも同じ時期。データマネジメント試験、プロフェッショナルデジタルスキル試験、情報処理安全確保支援士試験は2027年度夏頃から秋頃の予定と公表されています。
試験の外形は、IPAが2026年3月31日に公表した検討状況で示されています。現行と並べると次のとおりです。
| 項目 | 基本情報(新制度案) | SG(新制度案) |
|---|---|---|
| 試験時間 | 科目A 90分/科目B 100分 | 科目A・B合わせて120分 |
| 出題数 | 科目A 60問/科目B 20問 | 科目A 48問/科目B 12問 |
| 現行との比較 | 同じ | 同じ |
| 科目A免除制度 | 変更を予定していない | ― |
| 合格基準・受験料 | 確認できる公表資料に記載なし | 確認できる公表資料に記載なし |
科目A免除制度については、IPAが「基本情報技術者試験の科目A免除制度(中略)については、変更を予定していません」と明記しています。認定講座を修了して科目Aの免除を狙っている人にとって、ここは安心材料です。
見落としやすいのは、現行試験の受験期限のほうです。CBT方式の基本情報とSGは、試験システムのリプレースに伴って2026年12月28日以降の実施を休止します。最終開催日は12月27日で、会場によってはそれより早く終わります(詳しくはITパスポート・基本情報の休止と最終開催日にまとめています)。2027年1月以降の実施について、9月30日時点のIPAの新着情報に告知は出ていません。
基本情報・科目Aの重点分野は「システムの開発・運用」の3中分類
基本情報の案で最もはっきりした変化は、重点分野の置き方です。シラバス案は科目Aの範囲を「重点分野」と「その他の分野」に分けて書いており、重点分野に入ったのは大分類5「システムの開発・運用」の中分類20〜22の3つだけでした。
出題するのは30中分類のうち29
新制度の科目Aは、全試験区分で共通の7大分類・30中分類の体系で組まれています。基本情報のシラバス案に載っているのは、そのうち中分類7「マインド・スタンス」を除く29中分類です。マインド・スタンスは、出題範囲改定案の一覧表でITパスポートの列にしか印がありません。
| 区分 | 中分類 | 中身 |
|---|---|---|
| 重点分野 | 20 システムライフサイクルプロセス | 要件定義・設計・実装・テスト・運用保守までの流れと成果物 |
| 重点分野 | 21 開発・運用の方法論 | ウォーターフォール、アジャイル、DevOpsなどの開発手法 |
| 重点分野 | 22 アルゴリズム・プログラミング | 数値表現、データ構造、整列・探索、プログラム言語 |
| その他の分野 | 1〜6、8〜19、23〜30 | ビジネス変革、データ・AIの利活用、組織活動、デジタル技術、セキュリティ、倫理・コンプライアンス |
セキュリティの扱いにも差があります。出題範囲改定案の表では、中分類23〜25(脅威・マネジメント・対策)に二重丸の重点印が付いているのはSGの列で、基本情報の列は一重丸でした。ただし基本情報の科目Bには、今回も「情報セキュリティの確保」が独立した項目として残っています。軽くなったわけではありません。
科目Bは現行と同じ5項目、擬似言語も継続
科目Bの骨格は現行試験要綱 Ver.5.6 と変わりません。「プログラミング全般」「プログラムの処理の基本要素」「データ構造及びアルゴリズム」「プログラミングの諸分野への適用」「情報セキュリティの確保」の5項目で、プログラム言語は引き続き擬似言語を扱うと注記されています。
違いは粒度です。シラバス案は各項目に「目標とする技能の例」を添えました。たとえば「プログラムの詳細設計」が独立した小項目になり、処理内容を擬似言語や流れ図で表現するスキルが挙がっています。テストでは同値分割・限界値分析に基づくテストデータの用意、デバッグでは修正後に誤りが解消したことの確認まで書き込まれました。トレース(変数の値の追跡)だけでなく、設計とテストの目線も問われる書きぶりです。
現行版に見当たらない用語が並ぶ——AIエージェント、MCP、ゼロトラスト
分量は大きく減っています。現行シラバス Ver.9.2 は115ページ、今回の案は36ページです。一方で、案の用語例には現行版の本文に見当たらない言葉が多く入っています。IPAの2つのPDFを突き合わせ、現行 Ver.9.2 の本文に出てこない用語を拾いました。
| 現行Ver.9.2の本文で同じ表記を確認できなかった用語例 | 載っている中分類 |
|---|---|
| AIエージェント、自律性と人間の関与、ガードレール | 10 AI利活用(小分類「AIエージェント利活用」) |
| ツール連携(Function Calling)、長期記憶、MCP(Model Context Protocol) | 18 AI技術(小分類「AIエージェント技術」) |
| RAGによる知識連携、ランダム性の制御(Temperature、Top-p、Top-k)、蒸留 | 10 AI利活用/18 AI技術 |
| AIマネジメントシステム(ISO/IEC 42001) | 10 AI利活用 |
| ゼロトラスト | 24 情報セキュリティマネジメント |
| AI基本法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律) | 28 ビジネス関連法規 |
| テンソル、オイラー法 | 22 アルゴリズム・プログラミング |
| TypeScript、キャメルケース、スネークケース | 22 アルゴリズム・プログラミング |
目立つのはAIエージェント関連です。中分類10「AI利活用」には、識別AI・生成AIと並んで「AIエージェント利活用」という小分類が立ちました。中分類18「AI技術」にも「AIエージェント技術」があり、MCPやFunction Callingはここに入っています。生成AIの仕組みを知っているだけでなく、ツールと連携して動くAIの基本を押さえる前提になりそうです。
アルゴリズムの側でも、ダイクストラ法・ベルマンフォード法といった最短経路探索は現行版から引き続き載っています。数学ではテンソルやオイラー法が加わり、科目Bの「数理・データサイエンス・AIを題材としたプログラム」とつながる並びです。なお、この比較は用語例の有無を見たもので、現行版で用語例に無かった内容が出題されなかったという意味ではありません。
情報セキュリティマネジメントの案は重点5中分類・科目B12項目
SGのシラバス案は、30中分類のうち15中分類で組まれています。重点分野は5つで、セキュリティの中分類23〜25と、法規の中分類29・30です。
| 区分 | 中分類 |
|---|---|
| 重点分野 | 23 情報セキュリティの脅威/24 情報セキュリティマネジメント/25 情報セキュリティ対策/29 プライバシー関連法規/30 セキュリティ関連法規 |
| その他の分野 | 4 サービスマネジメント/9 データ分析・データ利活用/10 AI利活用/11 経営・組織論/12 ガバナンス・監査/15 クラウド/16 ネットワーク/26 セキュリティ実装技術・評価/27 情報倫理・AI倫理/28 ビジネス関連法規 |
科目Bの「目標とする技能」は12の大項目です。情報資産管理の計画、リスクアセスメントとリスク対応、外部委託、インシデント管理、内部不正の防止、コンプライアンスの運用などが並びます。これは現行試験要綱の科目B(情報セキュリティマネジメントの計画と、運用・継続的改善の2本立て)とほぼ同じ項目立てです。シラバス案はそれを、部門の担当者として何ができればよいかという技能の例に言い換えています。
その他の分野にAI利活用とクラウドが入った点は見ておく価値があります。改定案が示すSGの目標水準にも「組織活動,AI 利活用,クラウド,ネットワークなどの基本的な知識」という一文が入りました。ガードレールやAI基本法といった用語例は、SGのシラバス案にも載っています。
誰に影響し、今どう動くべきか
案どおりに実施されれば、影響を受けるのは2027年度春以降に受験する人です。2026年12月27日までに現行試験を受ける人の出題範囲は変わりません。すでに合格している人の資格についても、影響を示す公表はありません。
| あなたの状況 | 今回の公表の意味 | 取るべき行動 |
|---|---|---|
| 年内(12月27日まで)に受験する | 出題範囲は現行のまま | 現行シラバス(FEはVer.9.2、SGはVer.4.1)で学習を続け、通える会場の最終開催日を確認して申し込む |
| 2027年度春以降に受験する | 試験時間と問題数は同じ。科目Aの重点と用語例が入れ替わる見込み | アルゴリズムと擬似言語の演習は新制度でも重点のまま続ける。AIエージェント・生成AIの用語は確定版で再確認する |
| 科目A免除を使う予定 | 免除制度は変更予定なし | 認定講座の修了試験と受験時期の関係を、講座の案内で確認する |
| 学校・企業で教材を用意する | 骨格は見えたが Ver.0.1 | 全面改訂は確定版か次版を待つ。現行教材に、AIエージェント関連の補足を足す程度にとどめる |
判断の手がかりは、新制度にまだ過去問もサンプル問題もないことです。現行試験なら過去問と教材がそろっています。年内に受験できるか、学習がどこまで進んでいるか、確定版が出てから追加で学ぶ時間を取れるか。この3点で判断してください。
待つ場合でも、科目Bの勉強は止めずに済みます。新旧で同じ5項目が並ぶ以上、擬似言語でのトレースと整列・探索の演習は、どちらの試験でも得点の土台になります。ITパスポートの案と比べたい人は、ITパスポート新シラバス案の出題範囲と変更点も参考になります。
よくある質問
2026年に受ける基本情報は、今回のシラバス案の影響を受けますか
受けません。今回の案は2027年度春頃に始まる新試験制度に向けたものです。2026年12月27日までの現行試験は、現行シラバス Ver.9.2 と試験要綱 Ver.5.6 に基づいて実施されます。
新制度の基本情報でも擬似言語は出ますか
シラバス案と出題範囲改定案のどちらにも、科目Bは「プログラム言語について,擬似言語を扱う」と書かれています。現行と同じ扱いです。ただしどちらも案の段階なので、確定版で最終確認してください。
基本情報とSGのサンプル問題は出ていますか
9月30日時点では出ていません。サンプル問題のページは8月31日の更新が最後で、掲載済みはITパスポート、データマネジメント試験、プロフェッショナルデジタルスキル(マネジメント/システム)試験の科目B、情報処理安全確保支援士試験の科目Bです。
新制度の合格基準や受験料はいくらですか
確認できる公表資料に記載がありません。現行の基本情報は科目A・科目Bの評価点がそれぞれ600点以上、SGは科目A・Bを合わせた総合評価点が600点以上で合格です(いずれも1,000点満点)。新制度での扱いは、現時点で公式に発表されていません。
2027年1月から3月に基本情報は受けられますか
未定です。CBT方式の基本情報・SGは2026年12月28日以降の実施を休止し、IPAは2027年1月以降の実施について「2026年秋頃」に案内するとしています。9月30日時点では、その告知は出ていません。
まとめ
2027年度春頃に始まる予定の新しい基本情報は、検討状況では試験時間も問題数も現行と同じで、科目A免除制度も変更予定なしとされています。変わるのは科目Aの重点で、開発・運用とアルゴリズムの3中分類に絞られ、AIエージェントやMCPのような新しい用語が加わりました。SGも時間と問題数はそのままで、重点はセキュリティと法規の5中分類です。どちらも Ver.0.1 で確定ではありません。年内に受けられる人は現行範囲で受け切り、2027年度を待つ人も擬似言語の演習は今のうちから積んでおく。この先に確認すべきは、確定版のシラバス、FEとSGのサンプル問題、2027年1月以降の日程の3つです。それまでの間、トレース問題で間違えた箇所はSkillStackの自動復習で日をおいて解き直せます。
参考サイト
- IPA「新試験制度のシラバス案について」(取得日: 2026年9月30日)
- IPA「基本情報技術者試験 シラバス(案)Ver.0.1」(取得日: 2026年9月30日)
- IPA「情報セキュリティマネジメント試験 シラバス(案)Ver.0.1」(取得日: 2026年9月30日)
- IPA「情報処理技術者試験及び情報処理安全確保支援士試験の見直しの検討状況について」(取得日: 2026年9月30日)
- IPA「情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 出題範囲等の改定案」(取得日: 2026年9月30日)
- IPA「新試験制度のサンプル問題について」(取得日: 2026年9月30日)
- IPA「試験要綱・シラバスについて」(取得日: 2026年9月30日)
