試験に受かっても、そのままでは「情報処理安全確保支援士」と名乗れない——サイバーセキュリティ分野で唯一の国家資格であるこの試験には、合格後の「登録」というほかのIPA試験にはない関門があります。しかも登録後は講習の受講が義務づけられ、維持費用は最も安く抑えても3年間で約11.5万円。受験前に知っておくべきことは、合格率や勉強法だけではないのです。
試験自体も、合格率がおおむね20%前後(直近の2025年度秋期は22.3%)で推移する難関です。さらに2026年度からはCBT方式への移行と前期・後期への再編、2027年度には新試験制度への移行が控えており、「いつ・どの形式で受けるか」の判断が例年以上に合否と負担を左右します。
難易度・受験料・試験形式から、登録制度と維持費用、直近の制度変更までを2026年7月時点の情報で整理しました。読み終える頃には、この資格を目指すかどうかに加えて、「2026年度と2027年度のどちらで受けるか」まで自分の状況で判断できるようになります。
情報処理安全確保支援士試験の概要と難易度
情報処理安全確保支援士試験(略称SC)は、IPA(情報処理推進機構)が実施する国家試験で、サイバーセキュリティに関する高度な知識・技能を認定します。受験資格はなく、誰でも挑戦できます。受験料は7,500円(非課税)です。レベルとしてはIPAのスキルレベル4に位置づけられ、応用情報技術者の上位にあたる高度試験のひとつです。
合格率は時期によって変動しますが、おおむね20%前後で推移しており、直近の2025年度秋期試験では22.3%でした。受験者の多くがすでに実務経験者やIT資格保有者であることを踏まえると、この合格率の体感的な難易度は決して低くありません。特に記述式の午後試験が大きな関門になります。
試験は「午前I(90分・多肢選択30問)」「午前II(40分・多肢選択25問)」「午後(150分・記述式、大問4問中2問選択)」の構成です(この科目名は2025年度までの呼称です)。午前Iは一定条件を満たすと免除される制度があります。2026年度のCBT移行後は、出題形式・試験時間はそのままに呼称が「科目A-1・科目A-2・科目B」へ変わり、さらに後述のとおり2027年度からは試験時間なども含めた新試験制度への再編が予定されています。
難関試験ほど、独学では「何から手をつければいいか分からない」「午後の記述対策が後回しになる」というつまずきが起こりがちです。出題範囲が広いだけに、自分がどの分野で失点しているかを把握しないまま過去問だけを繰り返すと、勉強時間のわりに点が伸びない状態に陥ります。合格には、範囲を体系的に押さえたうえで演習を計画的に積む学習設計が欠かせません。
受験料・申込方法と2026年度の試験スケジュール
受験料は7,500円で、申込はIPAの公式サイトから行います。注目すべきは、2026年度から試験のスケジュールと方式が大きく変わる点です。従来の春期・秋期という区分が「前期試験」「後期試験」へと再編され、いずれもCBT方式(パソコンで受験する方式)で実施されます。
- 前期試験:2026年11月頃に実施予定(従来の春期試験に相当)
- 後期試験:2027年2月頃に実施予定(従来の秋期試験に相当)
情報処理安全確保支援士試験は前期・後期の両方で実施される予定で、申込は各回1回のみとされています。受験機会が年2回ある点は変わりませんが、紙の試験からCBTへ移行することで、出題の体感や時間配分の感覚が従来と変わる可能性があります。これから受験する人は、自分が受ける回の最新の実施要項を必ずIPA公式で確認しましょう。
合格後に必要な「登録」と維持費用
情報処理安全確保支援士の最大の特徴は、試験に合格しただけでは「情報処理安全確保支援士」を名乗れない点です。合格後に登録手続きを行って初めて有資格者(登録セキスペ)となります。この登録制と維持義務が、ほかのIPA試験との大きな違いです。
登録時には、登録免許税9,000円と登録手数料10,700円などがかかります(このほか受験料や住民票の取得費用が別途必要)。さらに、資格を維持するには継続的な講習の受講が義務づけられています。
- 毎年1回:オンライン講習(受講料20,000円・非課税)
- 3年に1回:実践講習(IPA実施・受講料80,000円)または特定講習(民間実施・講習により異なり、最安クラスで5万円台〜)
講習費用を合計すると、オンライン講習3回分(60,000円)に最安クラスの特定講習(約55,000円)を組み合わせた場合で、登録維持には最も安く抑えても3年間でおよそ11.5万円かかる計算です(登録時の登録免許税・登録手数料 計19,700円は別途)。なお2026年4月からは実務経験者を対象とした講習制度も導入されており、制度は継続的に見直されています。資格取得を検討する際は、合格後にこうした維持コストが発生することも前提に置いておきましょう。
2027年度からの新試験制度に注意
情報処理安全確保支援士試験は、2027年度から新しい試験制度へ移行します。従来の「午前I・午前II・午後」という構成(2026年度のCBT移行後は同じ構成のまま「科目A-1・科目A-2・科目B」の呼称)が、新制度では「科目A-1(45分)・科目A-2(35分)・科目B(120分)」へと再編され、全区分がCBT方式で実施される予定です。現行の試験制度は2026年度の実施をもって終了するとされています。
なお、情報処理安全確保支援士試験の科目A-2免除制度については、新制度でも変更を予定していないとされています。この再編は情報処理技術者試験全体の大きな見直しの一環で、対象や時期の詳細は情報処理技術者試験が2027年度に大刷新される全変更点で整理しています。受験する年度によって試験の形式が変わるため、いつ受けるかを先に決めておくと、対策の的を絞れます。
2026年度と2027年度、どちらで受けるべきか|状況別の判断表
結論は「記述対策の進み具合」で分かれます。ここまでの制度情報をもとに、状況別の目安を整理しました。
| あなたの状況 | 受験タイミングの目安 |
|---|---|
| すでに午後(記述)対策を進めている | 現行形式の最終年度である2026年度(前期・後期)で取り切る。積み上げた記述力をそのまま活かせる |
| これから学習を始める・記述式が苦手 | 2027年度の新制度(科目A-1・A-2・科目B、全CBT)も視野に、まず午前レベルの知識固めから着手。科目Bの出題形式は今後のシラバス公表後に確認する |
| 午前I免除などの免除条件を満たしている | 免除が使える期間内での受験を優先。新制度での免除の扱い(科目A-2免除は変更しない予定)もあわせてIPA公式で確認する |
情報処理安全確保支援士を取得するメリット
情報処理安全確保支援士は、サイバーセキュリティ分野で唯一の国家資格という希少性が大きな魅力です。セキュリティ人材の需要が高まる中、企業の採用・評価で武器になりやすく、官公庁の調達要件などで有資格者が求められる場面もあります。体系的にセキュリティを学んだ証明として、キャリアの幅を広げる効果が期待できます。
クラウド環境のセキュリティまで視野を広げたい場合は、ベンダー資格と組み合わせるのも有効です。例えばAWSのセキュリティ専門資格は新版SCS-C03へ刷新されており、国家資格と実務的なクラウド資格を両輪で学ぶと強みになります(詳細はAWS Security新版SCS-C03の変更点を参照)。
よくある質問
情報処理安全確保支援士の合格率はどのくらいですか?
おおむね20%前後で推移しており、直近の2025年度秋期試験では22.3%でした。受験者の多くが実務経験者やIT資格保有者であることを踏まえると、合格は容易ではなく、特に記述式の午後試験が合否を左右します。
受験資格や受験料を教えてください。
受験資格はなく、誰でも受験できます。受験料は7,500円(非課税)です。申込はIPAの公式サイトから行います。2026年度からはCBT方式に移行し、試験区分も前期・後期へ再編される予定です。
合格すれば「情報処理安全確保支援士」を名乗れますか?
いいえ。試験合格後に登録手続きを行って初めて「情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)」を名乗れます。登録には登録免許税や登録手数料がかかり、登録後も毎年のオンライン講習と3年に1回の実践講習などの受講が義務づけられています。
登録の維持にはどのくらい費用がかかりますか?
最も安く抑えても、3年間でおよそ11.5万円が目安です。内訳は毎年のオンライン講習(20,000円×3回=60,000円)と、3年に1回の実践講習(IPA実施・80,000円)または特定講習(最安クラスで約55,000円)で、最安の組み合わせが約11.5万円です。このほか登録時に登録免許税9,000円と登録手数料10,700円がかかります。合格後も継続的な費用が発生する点を理解しておきましょう。
まとめ
情報処理安全確保支援士は、合格率20%前後の難関であることに加え、合格後の登録と3年間で約11.5万円の維持費用まで含めて向き合う資格です。負担は軽くありませんが、セキュリティ人材の需要が高まり続けるなかで、国家資格としての証明力はその投資に見合う武器になります。制度の転換期であるいま最初にやるべきことは、判断表を手がかりに「いつ・どの形式で受けるか」を決め、そこから逆算して学習計画を組むことです。広い出題範囲を前にやみくもに過去問を回すより、分野ごとの正答率を見える化して弱点から潰していけるSkillStackのような学習アプリで、伸ばすべき分野に時間を集中させるほうが近道です。
参考サイト
- 令和8年度(2026年度)応用情報技術者試験、高度試験及び情報処理安全確保支援士試験の実施予定について(IPA / 取得日: 2026年6月27日)
- 情報処理技術者試験及び情報処理安全確保支援士試験の見直しの検討状況について(IPA / 取得日: 2026年6月27日)
- 情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)制度の見直しについて(IPA / 取得日: 2026年6月27日)
- 統計情報(応用情報技術者試験、高度試験、情報処理安全確保支援士試験)(IPA / 取得日: 2026年7月7日)
- 講習の目的と概要(IPA / 取得日: 2026年7月7日)
- 情報処理安全確保支援士特定講習(経済産業省 / 取得日: 2026年7月7日)
