「合格率7割なら、ITに詳しくなくても受かるのでは?」——情報セキュリティマネジメント試験を調べた人の多くが、最初にそう感じます。半分は正解です。令和7年度の合格率は70.0%。ただし学生に絞ると52.1%まで下がり、2026年8月の合格者は68%が600〜699点に集まっていました。数字の裏側を見ると、「誰でも受かる」とまでは言えません。
もう一つ、今年は受ける時期にも注意が要ります。この試験のCBT方式での実施は2026年12月27日が最終開催日で、12月28日以降は休止予定です。10月5日時点で、IPAは2027年1月以降の実施日をまだ発表していません。
読み終えるころには、試験の形式・合格基準・受験料を押さえたうえで、ITパスポートや基本情報との違いを数字で説明できるようになります。IPA統計を属性別に分けた「自分に近い人の合格率」と、年内に受けるか2027年度の新制度を待つかの判断表も用意しました。
情報セキュリティマネジメント試験とは——利用部門の「セキュリティリーダー」を認定する国家試験
情報セキュリティマネジメント試験(SG)は、ITを使う側の部門で情報セキュリティを担う人のための国家試験です。IPAが示す対象者像は「情報システムの利用部門にあって、情報セキュリティリーダーとして」部門の対策を実現・維持・改善する人。システムを作るエンジニアではなく、使う現場の担当者が主役です。
平成28年度春期に新設され、令和5年度からはCBT方式で通年実施されています。レベルは共通キャリア・スキルフレームワークのレベル2相当で、基本情報技術者試験と同じ段です。IPAは受験を勧める人として、業務で個人情報を扱う人、業務部門・管理部門で情報管理を担当する人、外部委託先のセキュリティを確認する人などを挙げています。営業・総務・人事・経理といった部門を問わない、と明記しているのが特徴です。
試験の概要——120分・60問、合否は総合評価点600点で決まる
現行試験の骨格は次のとおりです。数字はIPAの試験区分ページと試験要綱 Ver.5.6 から拾いました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実施方式 | CBT方式(会場のコンピュータで受験)。2026年12月27日が最終開催日 |
| 試験時間 | 科目A・科目Bを合わせて120分 |
| 出題数 | 60問(科目A 48問・科目B 12問)。評価は54問で行い、残り6問は今後の出題のための評価に使われる |
| 出題形式 | 科目A:多肢選択式(四肢択一)/科目B:多肢選択式 |
| 採点方式 | IRT(項目応答理論)に基づいて評価点を算出 |
| 合格基準 | 総合評価点600点以上(1,000点満点) |
| 受験手数料 | 7,500円(消費税込み) |
| 再受験 | 前回の受験日の翌日から起算して30日を超えた日以降を指定可能 |
| 合格の有効期限 | なし |
60問のうち6問は採点に入りませんが、どれがその6問かは受験者には分かりません。全問を本番として解くしかない、ということです。
科目Aは知識、科目Bは「現場のケーススタディ」
科目Aでは、情報セキュリティ全般・管理・対策・関連法規を重点分野として、ネットワークやシステム監査、経営管理などの関連知識も問われます。法規はサイバーセキュリティ基本法、個人情報保護法、不正アクセス禁止法といった範囲です。
科目Bは毛色が違います。情報資産管理、リスクアセスメント、委託先管理、情報セキュリティ教育・訓練などを題材にしたケーススタディで、「この部署の担当者なら次に何をすべきか」を選ばせる問題です。IPAは、内部不正の防止やクラウドサービスの安全な利用など、業務の現場で直面する事例に即して出題すると説明しています。
IRT採点だから「何問正解で合格」とは言えない
合否は、科目Aと科目Bを合算した総合評価点が600点に届くかどうかで決まります。基本情報のように科目ごとに基準点があるわけではありません。一方で、IRT方式では問題ごとの難易度などを踏まえて評価点を出すため、「60問中◯問正解なら合格」という換算表は存在しません。IPAの試験要綱も、IRTのため配点割合はないとしています。
つまり、どの分野で何点落とせるかを事前に計算できない試験です。範囲は法規から技術まで散らばっていて、科目Bは文章を読む量も多い。何から手をつければいいか分からず、テキストを1ページ目から読み始めて止まってしまう——SGの独学で最初に起きやすいつまずきです。
ITパスポート・基本情報・支援士とどう違う?4試験を数字で比較
SGの立ち位置は、「ITパスポートの次に、セキュリティ側へ進む段」です。同じレベル2の基本情報が開発者向けであるのに対し、SGは使う側の管理者向け。上位には情報処理安全確保支援士があります。
| 項目 | ITパスポート | 情報セキュリティマネジメント | 基本情報技術者 | 情報処理安全確保支援士 |
|---|---|---|---|---|
| レベル | 1 | 2 | 2 | 4 |
| 主な対象 | ITを利活用するすべての社会人・学生 | 利用部門で情報セキュリティを担う人 | ITエンジニアを目指す人 | セキュリティの専門人材 |
| 試験時間・出題数 | 120分・100問 | 120分・60問 | 科目A 90分・60問/科目B 100分・20問 | 科目A-1 50分・30問/科目A-2 40分・25問/科目B 150分・4問中2問解答(記述式) |
| 合格率 | 49.3%(2026年4〜8月) | 72.7%(2026年4〜8月) | 39.2%(2026年4〜8月) | 22.3%(令和7年度秋期) |
| 受験料 | 7,500円 | 7,500円 | 7,500円 | 7,500円 |
| 合格後の登録 | なし | なし | なし | 任意。ただし「支援士」を名乗るには登録が必要で、登録者には講習の受講義務がある |
受験料は4試験とも同額です。違いが大きいのは合格率で、SGはITパスポートより20ポイント以上高く出ています。ただし受験者層が違うため、単純に「ITパスポートより易しい」とは読めません。令和7年度のSG受験者は約89%が社会人で、学生が多く受けるITパスポートとは母集団が異なります。
プログラミングが出ないのも大きな差です。基本情報の科目Bはアルゴリズムと擬似言語が中心ですが、SGの科目Bは管理の事例問題。プログラミングを主眼とせず、セキュリティ管理を学びたい人にとって有力な選択肢です。上位の支援士は試験の難度に加え、名乗るための登録と講習の負担もあるので、詳しくは情報処理安全確保支援士の難易度と登録制度で整理しています。
合格率70.0%の中身——IPA統計を属性別に分解すると見える差
結論から言うと、SGの合格率は「誰が受けるか」で20ポイント以上動きます。全体の数字だけで難易度を判断すると、自分の立ち位置を見誤ります。IPAが公開している統計資料から、令和7年度(2025年4月〜2026年3月)の1年分を分けてみました。
| 年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 令和5年度 | 36,362人 | 26,398人 | 72.6% |
| 令和6年度 | 41,657人 | 28,731人 | 69.0% |
| 令和7年度 | 45,924人 | 32,141人 | 70.0% |
| 令和8年度(4〜8月) | 17,458人 | 12,684人 | 72.7% |
CBTの通年実施になってから、合格率は69〜73%の幅で安定しています。受験者数は3年で約1万人増えました。
社会人72.2%、学生52.1%——20ポイントの差
令和7年度を属性で分けると、差ははっきりしています。数字はIPAの勤務先別・業務別の一覧表から計算した合格率(合格者数÷受験者数)です。
| 属性(令和7年度) | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 社会人 全体 | 40,860人 | 29,502人 | 72.2% |
| IT系の業務(IPAの業務分類の小計) | 10,129人 | 7,657人 | 75.6% |
| 総務・人事 | 1,561人 | 1,120人 | 71.7% |
| 営業・販売(非IT関連) | 1,521人 | 1,000人 | 65.7% |
| 学生 全体 | 5,064人 | 2,639人 | 52.1% |
| うち大学 | 1,022人 | 687人 | 67.2% |
| うち専門学校 | 2,009人 | 877人 | 43.7% |
| うち高校 | 713人 | 353人 | 49.5% |
統計だけでは、この差の原因までは分かりません。ただ、科目Bの「委託先との契約で何を確認するか」「インシデント発生時に誰へ報告するか」といった設問は、職場の場面を想像しながら読む作りです。学生の人は、IPAが公開している科目Bの問題を早めに解き、事例問題に慣れているかを自分で確かめておくと安心です。
総務・人事71.7%——非IT職でも十分に届く
非IT職の人にとって心強いのは、総務・人事の合格率71.7%がIT系の業務(75.6%)と4ポイントほどしか離れていないことです。個人情報の管理、入退社時のアカウント管理、委託先とのやり取り。総務や人事が日常的に扱う業務は、SGの出題範囲とそのまま重なります。
なお業務別の集計には、業務を「その他・無記入」とした受験者も多く含まれます。ここで挙げた業務ごとの数字は、回答した人の範囲での比較として読んでください。
合格者の3人に2人は600〜699点
もう一つ、IPAが月ごとに公開している評価点分布を見ます。2026年8月の受験者4,315人のうち、合格した3,123人の内訳は次のとおりでした。
- 600〜649点:1,092人
- 650〜699点:1,025人
- 700点以上:1,006人
- 550〜599点(あと一歩で不合格):490人
合格者の約68%(2,117人)が600〜699点に集まり、800点以上は89人だけでした。一方で、550〜599点で涙をのんだ人も490人。受験者の約9人に1人です。合格者の評価点は、基準点のすぐ上の600〜699点に集中していました。合格率7割を「余裕で通る試験」と読むのは早計です。
12月27日でCBT休止——年内に受けるか、新制度を待つか
この章では、今年SGを受けるかどうかの判断材料をそろえます。IPAはシステムのリプレースに伴い、CBT方式のITパスポート・SG・基本情報の3試験を2026年12月28日以降休止します。最終開催日は12月27日で、会場によってはそれより前に終わります。休止の経緯と3試験共通の注意点はITパスポート・基本情報の休止と最終開催日で詳しく扱っています。
10月5日時点で決まっていること、決まっていないこと
- 決まっている:2026年9月1日以降の申込では、選べる試験日は「申込日から2026年12月27日まで」。申込後に日程を変更する場合も、12月28日以降は選べない
- 決まっている:空席がなくて受験できなかった場合も含め、受験手数料は返還されない
- 決まっている:バウチャーチケット(前売りチケット)の購入申込は7月31日で一時停止中。発行済みチケットの有効期限は延長されない
- 決まっていない:2027年1月以降の試験実施。IPAは「2026年秋頃にウェブページでお知らせ」としているが、10月5日時点のIPA新着情報に告知はない
企業や学校の担当者向けに補足すると、5名以上の多人数一斉受験の相談受付も一時休止中で、再開は2027年1月以降の予定とされています。ただしこれは相談窓口の話で、個人受験の再開日を示したものではありません。
再受験のチャンスを残すなら、初回は11月26日まで
見落としやすいのが再受験の規定です。SGで一度受験すると、次に指定できる受験日は「前回の受験日の翌日から起算して30日を超えた日以降」になります。逆算すると、11月26日に受けた場合、再受験で選べる最も早い日が12月27日です。
つまり、年内に2回のチャンスを確保したい人の初回受験の期限は11月26日。しかも12月27日に試験を開いている会場を押さえられることが前提です。実際には会場の空きを考え、11月中旬までに1回目を終える計画が現実的です。
2027年度の新制度でも、時間と問題数は同じ予定
待つ選択肢も見ておきます。IPAの検討状況では、新制度のSGは2027年度春頃に始まる予定で、試験時間は科目A・Bを合わせて120分、出題数は科目A 48問・科目B 12問。現行と同じ数字です。9月30日に公表されたシラバス案 Ver.0.1 では、重点分野がセキュリティの3中分類と法規の2中分類に置かれ、AI利活用やクラウドも「その他の分野」として明記されました(詳細は基本情報・SGの新シラバス案)。IPAは今回の見直しについて、表記の変更などで、試験で問う知識・技能の範囲そのものに変更はないと説明しています。シラバス案は確定版ではなく、新制度での合格基準と受験料も現時点で公式に発表されていません。なお、新制度の開始時期と、12月28日以降に休止するCBTの再開日は別の話で、後者はまだ発表されていません。
あなたはどっち? 受験時期の判断表
| あなたの状況 | おすすめの動き方 |
|---|---|
| すでに学習を始めていて、12週あれば仕上がる | 年内受験。11月中旬までに1回目を受け、不合格なら12月中の再受験に備える |
| これから始める社会人(業務で情報管理に関わっている) | 年内受験を第一候補に。科目Bの事例は実務と重なるため、短期でも狙いやすい |
| これから始める学生 | まず公開問題で科目Bを解いて手応えを確かめる。12月までに仕上がる見込みが立たなければ、再開と新制度の発表を待ちながら学習を進める |
| 会社の指示で受験する・期限がある | まず通える会場の空席と最終開催日を確認。12月27日を逃すと、次の受験日はまだ発表されていない |
| バウチャーチケットを持っている | 有効期限を確認し、期限内の日程で申し込む |
主な判断軸は、学習の進み具合と、年内に会場を確保できるかの2つです。年内に受けた結果は、新制度に切り替わっても消えません。IPAは試験合格の有効期限を設けていないからです。間に合うなら現行で取り切り、間に合わないなら学習を止めずに再開の発表を待つ。迷う時間がいちばんもったいない期間です。
よくある質問
情報セキュリティマネジメント試験はITパスポートより難しいですか
出題の専門性はSGのほうが高く、レベルもITパスポートの1に対してSGは2です。合格率はSGのほうが高いものの、SGは受験者の約89%が社会人で、受験者層が異なるため合格率だけでは難易度を比べられません。ITパスポートで学んだセキュリティ分野を、管理の実務まで掘り下げる試験と考えるとイメージしやすくなります。
SGと基本情報はどちらを先に受けるべきですか
コードを書かない職種で、まずセキュリティ管理を学びたいならSGが候補です。基本情報の科目Bはアルゴリズムと擬似言語が中心で、プログラミング未経験者には準備期間が長くかかります。エンジニア志望なら基本情報を先に取り、セキュリティ管理の知識を補う目的でSGを受ける順番もあります。
試験中にメモは取れますか
取れます。CBT会場では、携帯電話や上着などの手荷物を指定のロッカーに預け、試験中のメモは会場が用意するメモ用紙とボールペンで取ります。科目Bは文章量が多いので、メモ用紙に登場人物や部署の関係を書き出しながら読むと整理しやすくなります。
合格したら資格の更新は必要ですか
必要ありません。IPAは情報処理技術者試験の合格に有効期限はないとしています。名乗るために登録が必要で、登録後は講習の受講義務がある情報処理安全確保支援士とは、この点が大きく異なります。
まとめ
情報セキュリティマネジメント試験は、ITを使う側の部門で情報を守る人のための国家試験です。合格率70.0%という数字は安心材料になりますが、学生なら52.1%、合格者の多くは基準点のすぐ上という現実もあります。そして今年は、12月27日という締め切りがある。10月5日から数えて残りは12週弱です。今日やることは、通える会場の空席を確かめて受験日を仮置きすることと、科目Bの事例問題を1問解いて自分の手応えを知ること。通勤電車や昼休みの10分を科目Bの事例演習に回したいなら、スマホで1問ずつ解き進められるSkillStackが使えます。試験日から逆算した12週は、思うより短く、使い方しだいで十分な長さです。
参考サイト
- IPA「情報セキュリティマネジメント試験」(取得日: 2026年10月5日)
- IPA「情報セキュリティマネジメント試験とは」(取得日: 2026年10月5日)
- IPA「情報セキュリティマネジメント試験 出題内容」(取得日: 2026年10月5日)
- IPA「試験要綱・シラバスについて」(試験要綱 Ver.5.6)(取得日: 2026年10月5日)
- IPA「CBT方式で実施するITパスポート試験、情報セキュリティマネジメント試験及び基本情報技術者試験における2026年5月以降の試験実施について」(取得日: 2026年10月5日)
- IPA「情報セキュリティマネジメント試験、基本情報技術者試験」(取得日: 2026年10月5日)
- IPA「基本情報技術者試験、情報セキュリティマネジメント試験の通年試験に関するお知らせ(リテイクポリシーの公開)」(取得日: 2026年10月5日)
- IPA「統計情報(情報セキュリティマネジメント試験)」(取得日: 2026年10月5日)
- IPA「統計情報(基本情報技術者試験)」(取得日: 2026年10月5日)
- IPA「ITパスポート試験 統計情報」(取得日: 2026年10月5日)
- IPA「令和7年度秋期情報処理技術者試験(応用情報技術者試験、高度試験)及び情報処理安全確保支援士試験の合格発表について」(取得日: 2026年10月5日)
- IPA「情報処理技術者試験及び情報処理安全確保支援士試験の見直しの検討状況について」(取得日: 2026年10月5日)
- IPA「新試験制度のシラバス案について」(取得日: 2026年10月5日)
- IPA「情報セキュリティマネジメント試験 シラバス(案)Ver.0.1」(取得日: 2026年10月5日)
- IPA「情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)に関するよくあるご質問」(取得日: 2026年10月5日)
- IPA「試験に関するよくある質問」(取得日: 2026年10月5日)
